ちょっと待って! 詐欺被害防止、客へ声かけ訓練 釜石署とコンビニ連携


2022/06/29
釜石新聞NewS #防災・安全

コンビニ店で行われた特殊詐欺被害を防ぐ声かけ訓練

コンビニ店で行われた特殊詐欺被害を防ぐ声かけ訓練

 
 医療費や保険金の還付金があるなどとしてコンビニエンスストアのATM(現金自動預払機)から現金を振り込ませる還付金詐欺、有料サイトの利用料金未納分の支払いを求めるメールやハガキを送ってコンビニで電子マネーギフト券などを購入させて番号を聞き出す架空料金請求詐欺など、コンビニを使った特殊詐欺の被害が全国的に多発している。釜石警察署(前川剛署長)は22日、釜石市松原町の「セブンイレブン釜石松原店」で高額の電子マネーを購入させる特殊詐欺被害を防ぐ声かけ訓練を行った。
 
 署員が客(被害者)役を務め、同店の女性店員が注意喚起役を担当した。客は携帯電話で話しながら入店し、電話口の相手から指示を受けながらATMを操作。現金をおろした後、電子マネーの棚から10万円分の同ギフト券を取り、レジへ向かった。店員は詐欺被害への注意を促すチェックシートを示しながら「高額で心配。確認させてください」と声を掛け、購入理由や不審点などを聞き取り、警察に通報。駆け付けた署員が詳しい事情を聴いて、被害を防いでいた。
 
電話をしながら電子マネーを購入しようとする客に目を向ける店員(奥)

電話をしながら電子マネーを購入しようとする客に目を向ける店員(奥)

 
レジ前では女性店員(左)が被害者役の署員を粘り強く説得した

レジ前では女性店員(左)が被害者役の署員を粘り強く説得した

 
 訓練で対応にあたった店員の井戸麻美さん(28)は「被害者役の人は焦っていて強引。信じ込んでしまっているようだった」と振り返った。「息子から頼まれた」「でも電話してきたのは別人」「30万円の支払いが今なら10万円でいいと言っている」「10万円がだめなら、5万円だったらいいのか」など、おかしな言動が気になり、粘り強く説得した。
 
 客は納得がいかない様子だったが、署員の姿を確認すると、「言いにくいが、実は…ある画像を見てしまって」と打ち明けた。井戸さんは「(客が)本当のことを言っているのか、分からない。詐欺だと認めてもらい、警察を呼べるか、判断が難しい。とにかく、おかしいなと思えることが大事。電子マネーに関わらず、電話でお金の話をしていたら、近づいて様子を見るようにした方がいい」と認識した。
 
対応した店員は駆け付けた警察官に状況を伝えた

対応した店員は駆け付けた警察官に状況を伝えた

 
 チェックシートは県警と県コンビニエンスストア等防犯対策協議会連合会が作成し、県内のコンビニなどに配布。そこには「ちょっと待って!」「訴訟を起こすというハガキが送られてきた」「電子ギフト券を買うよう指示された」「それは詐欺!」などと書かれ、注意を喚起している。井戸さんは「言葉だけで伝えるより、シートを見せることでお客様に考える時間を持ってもらえる」と実感した。
 
 同署生活安全課の小田島徹課長は「実際のところ、声を掛けるというのは難しいと思う。訓練という形で声掛けを体験することでハードルを下げ、気になる客に勇気を持って声を掛けてほしい。シンプルにまとめたチェックシートがその手助けになれば。いつか被害防止につながる」と期待する。
 
コンビニなどに配布されている特殊詐欺被害防止チェックシート

コンビニなどに配布されている特殊詐欺被害防止チェックシート

 
 県内で今年5月末までの特殊詐欺認知件数は11件(前年同期比6件減)で、被害額は5791万円(同比4399万円増)。架空料金請求詐欺、キャッシュカードを別のカード類とすり替えて盗む「キャッシュカード詐欺盗」が各4件、還付金詐欺が3件で、被害額の約9割が架空料金請求によるものとなっている。
 
 釜石署管内では今年、被害は確認されていない。特殊詐欺の手口は巧妙化し、複数の方法を組み合わせて複雑化しており、「詐欺に気づく力が必要。昨年は1件、数百万円の被害があった。本人だけでなく、家族に高齢者がいれば、身近で起こるかもしれない。家族間の話題として話し合ってほしい」と小田島課長。新型コロナウイルス禍で控えていたスーパーなどでのチラシ配布による啓発活動を再開する予定で、「広報媒体を通じ意識付けし、被害を食い止めていきたい」と力を込めた。

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