繊細、複雑…かみわざ!切り絵作家・黒須由里江さん(釜石)作品展


2022/03/25
釜石新聞NewS #文化・教育

「独特の技法で作り出す絵は、完成したときの達成感もひとしお」と黒須さん

「独特の技法で作り出す絵は、完成したときの達成感もひとしお」と黒須さん

 

 釜石市の美術集団サムディ45所属の切り絵作家、黒須由里江さん(43)の作品展「かみわざ」が、大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。釜石・大槌在住の作家を紹介する同ホールの自主事業「art at TETTO(アートアットテット)」の第4弾。神話や仏教、伝承などをモチーフに、複雑で細緻な線をつないだ「どこか色気のある」作品を生み出してきた黒須さん。自身初の個展で、最新作を含め約20点を展示している。27日まで。

 

 黒須さんは大槌町出身。小さい頃から絵を描くことが好きだったが、油彩や水彩、美術学校を卒業するなど専門的に学んでおらず、色を塗るのは苦手。ただ、デッサンには自信があり、描くことはやめなかった。描いた線を作品として残す方法を試行錯誤し、たどり着いたのが切り絵。細かな線を切り抜いた紙(絵)と台紙(背景)が作る2色の世界観が線を際立たせる手段としてピタリとはまり、10年ほど前に始めた。同じ頃に同集団にも加入。釜石市内の郵便局に勤める傍ら創作活動に励んでいる。

 

神話や仏教などをモチーフにした作品が並ぶ

神話や仏教などをモチーフにした作品が並ぶ

 

 神話上の生物や仏像、風俗習慣などに関心があり、「想像上のものを絵にしたら面白い。自分だったら…」と心を動かされるものを作品にしてきた黒須さん。展示では、インド神話や仏教に関わりのある「鳥頭人身有翼」の神をモチーフにした「迦楼羅(かるら)」、千の手で衆生を救うという「千手観音」を主題にした「hands」、最新作でインドネシア・バリ島の伝統的な民族舞踊に登場する「聖獣バロン」と「魔女ランダ」の戦いを描いた「バロンダンス」など、繊細ながらも躍動感あふれる世界を見せる。

 

 19、20日にはワークショップを開催。参加者は、黒須さんがデザインした虎舞などの図案の切り抜きに挑戦した。線が太めの図案でも細かな作業が必要な部分もあり、体験者たちは図案に集中。黙々と手を動かしていた50代の女性は「力の入れ具合、細かいとことから切るというコツをつかむとサクサク作業が進む。出来上がった時の達成感が気持ちいい。リフレッシュしたい時にやってみるのもいいかも」と楽しんでいた。

 

切り絵体験ワークショップで達成感を得る参加者、見守る黒須さん(中)

切り絵体験ワークショップで達成感を得る参加者、見守る黒須さん(中)

 

 黒須さんは、中央美術協会主催の公募展「中美展」に2015年から出品し、入選・入賞を重ねていて、昨年は「バロンダンス」が準会員賞に選ばれた。審査員から「独特の切り絵。どこか色気がある」と評価され、独学ながらも続けてきた作風に手応えを実感。市販で手に入るラシャ紙で一番大きいサイズ(縦約110センチ、横約80センチ)を目いっぱい使った作品を作りたい―と意欲を高めている。

 

 大作は完成までに約半年かかるといい、並んだ作品には「達成感のほかに、(制作から)解放された喜びがあふれている」と黒須さん。「どうやってこれを作ったのか、想像しながら見てもらえたら、うれしい」とほほ笑む。

 

来場者はお気に入りの作品探しを楽しんでいる

来場者はお気に入りの作品探しを楽しんでいる

 

 かみわざは午前9時~午後9時(最終日は午後4時)まで鑑賞できる。26、27日は黒須さんの実演がある。

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