釜石市民劇場 唐丹の天文学者・葛西昌丕をめぐる物語で3月6日公演へ
釜石市民劇場キャストの稽古=1月27日夜、市民ホールTETTO
第35回釜石市民劇場(同実行委主催)は、江戸時代の唐丹村で名をはせた天文学者・葛西昌丕(まさひろ)の人物像をフィクションで描く創作劇。3月6日に大町の市民ホールTETTOでの公演を予定する。新型コロナウイルス禍で2年ぶりとなる公演に向け、キャスト、スタッフらは気合い十分。本番まで1カ月余りとなり、熱のこもった稽古を続けている。
葛西昌丕(1765―1836)は唐丹村本郷生まれ。葛西家は代々、五十集(いさば=水産加工)を営む地元の名家で、昌丕は若くして勉学の道へ。仙台で国学、天文地理などを学んだとされる。江戸幕府の命で全国を測量して歩いた伊能忠敬が唐丹を訪れた際に、関わりがあったとの説もあり、昌丕は測量から13年後の1814年に忠敬の偉業を記した石碑を建立している。同所の緯度と周りに星座名を刻んだ星座石も残し、これらは忠敬の測量事績を江戸時代に示したものとしては全国唯一とされる。1985年に県指定文化財となった。
葛西昌丕が建立した「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」写真提供=市文化振興課
唐丹の緯度(北緯39度12分)を中心に星座名を刻んだ「星座石」写真提供=市文化振興課
今回の市民劇場の脚本は同実行委の久保秀俊会長(73)が執筆。劇中では昌丕の功績はナレーションでの紹介にとどめ、人物像に焦点を当てる。「人間味のある人だった」という資料の一文から発想を膨らませ、地域の人たちとの関わりをフィクションで描いた。歴史資料によると、葛西家は明治三陸大津波で滅亡。一家や昌丕個人の私生活を詳しく記した資料はなく、地元で伝え聞く人も今となってはいないという。
久保会長は「私財を投げ打って地域に新道を造るなど、科学者だけでなく人格者としても尊敬に値する人物だったのではないか。人にやさしく接し、話をよく聞いてあげただろう姿を想像し物語を書いた」と話す。二幕十場、約2時間の公演予定で、劇の前には地元本郷の「桜舞太鼓」がステージを盛り上げる。
キャストは小学生から60代まで14人で、4人が初挑戦。昨年11月末から稽古を開始し、今はセリフと動作を組み合わせながら演技の基礎固めを行う。久保会長が総監督を務め、キャストの武田仁一さん(71)、小笠原景子さん(37)が助演出を兼ねる。舞台制作も始まっており、今後、キャストの協力も得ながら準備を進めていく。
地元言葉のイントネーションを教える助演出の武田仁一さん(右)
現在、週4回ほどのペースで稽古を続けるキャスト。観客に楽しんでもらおうと熱心に励む
総監督を務める久保秀俊実行委会長。今作品の脚本も手掛けた
市民劇場初参加の西山彩菜さん(16)は、物語の主要人物となる「おユキ」役。「本心を出せず、どこか強がっている子ども。自分とは正反対」と役柄を分析。「本番では、おユキがこの場にいると錯覚させたい。ベテランの先輩たちに負けないよう、存在感を放っていけたら」と意気込む。
葛西昌丕役の久保修二さん(右)とおユキ役の西山彩菜さん
主人公「葛西昌丕」役は久保修二さん(54)。20代初めに出演経験があり、一昨年の前回公演で約30年ぶりに復帰した。釜石出身で、自営業を営む花巻市から稽古に通う。初めての主役抜てきに「(多くの人と絡むので)相手とのセリフの間に苦労している」と難しさを実感。「恵まれた環境で勉強する昌丕が、つらい境遇を生きてきた人たちと接する中で芽生える心情の変化を表現できれば。人物像をしっかりイメージしながらやっていきたい」と気を引き締める。
第35回釜石市民劇場「満天の星は知っている『天文学者葛西昌丕』若き日の私記」は、3月6日(日)午前10時半、午後2時半の2回公演。チラシやポスターが完成次第、チケット販売を開始する。
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