災害時は主体的な行動で命を守る 釜石東中・鵜住居小合同総合防災訓練


2021/10/09
釜石新聞NewS #防災・安全

けが人役の小学生を背負い、避難所の体育館に向かう中学生=鵜小・東中合同防災訓練

けが人役の小学生を背負い、避難所の体育館に向かう中学生=鵜小・東中合同防災訓練

 

 釜石東中(米慎司校長、生徒97人)と鵜住居小(堀村克利校長、児童146人)の合同総合防災訓練は9月29日、両校の施設などで行われた。昨年は新型コロナウイルスの影響で中止されたため、2年ぶりの開催。在校時に地震、津波が発生した場合の避難行動、校内に地域の避難所が開設された際の自主的行動力を身に付けようと、児童・生徒らが真剣に取り組んだ。

 

 訓練は三陸沖を震源とする震度6強の地震が発生、高さ10メートル以上の津波が襲来するという想定で行われた。大地震発生の校内放送が流れると、児童・生徒はそれぞれの場所で安全に身を守る行動を取った。校舎内では机の下、外では建物から離れ、体を低くして頭を守った。揺れがおさまったら放送の指示で避難を開始。より高い場所への避難を意識づけた。

 

校庭から階段を駆け上がり、より高い広場への避難を始める中学生

校庭から階段を駆け上がり、より高い広場への避難を始める中学生

 

1次避難で校庭に集まる小学生。この後、4階の中学校昇降口前へ向かった

1次避難で校庭に集まる小学生。この後、4階の中学校昇降口前へ向かった

 

 両校の体育館は大規模災害発生時、地域の避難者を受け入れる市の拠点避難所に指定されている。この日の訓練では、生徒自ら避難所を開設し、さまざまな立場の避難者を受け入れる体験もした。中学3年生は体育館内に畳やマット、パーテーションを運び入れ、避難者の導線を確保。同2年生は校庭に避難してきた人を体育館まで誘導。けが人、視覚、聴覚障害者、妊婦、高齢者、外国人など多様な避難者役を小学5年生が務めた。

 

避難者が休めるよう、畳を運び入れる中学生

避難者が休めるよう、畳を運び入れる中学生

 

受付では避難者から氏名、年齢、持病の有無などを聞いた

受付では避難者から氏名、年齢、持病の有無などを聞いた

 

体の不自由な避難者は介助しながら誘導

体の不自由な避難者は介助しながら誘導

 

 受付では避難者名簿を作成。誘導する生徒は避難者に声を掛けたり、介助しながら体育館に入り、各避難者に対応したスペースに案内した。感染症対策として、避難者を体育館から各教室に分散移動させる訓練もあり、小学6年生が誘導した。

 

 駒林強矢君(小6)は避難行動について「何回も訓練を重ね、スムーズにできるようになってきた。今日は時間をうまく使えないところもあったので、もっと自分たちでできることを考えたい」、青木希実さん(同)は「避難が大変な人もいるので、声掛けやサポートをして一緒に行動してあげたい。災害の時は臨機応変に動いて、自助だけでなく共助もやりたい」と意識を高めた。

 

 避難訓練に先立ち、中学1年生は備蓄倉庫にあるかまどを使っての米の炊き出し、仮設トイレの組み立ても体験した。地震、津波災害時のあらゆる場面を想定した訓練は、自他の命を守るとともに自ら考え冷静に行動できる力を養う狙いがある。

 

まきをくべたかまどを使って米を炊く訓練

まきをくべたかまどを使って米を炊く訓練

 

説明書を見ながら仮設トイレの設営に挑戦

説明書を見ながら仮設トイレの設営に挑戦

 

 避難者の受付を担当した髙橋燕さん(中3)は「いろいろな人が集まってくるので、混乱しないようきちんと把握する必要がある。避難所運営では周りの状況を見ながら行動することが大切」、避難誘導に当たった伊藤楓太君(中2)は「体の不自由な人の避難では体験してみて初めて分かることも。いつ災害がきても対応できるように、訓練などを通じて日ごろから準備しておきたい」と気を引き締めた。

 

中学生の行動は小学生に「将来、自分たちも」と思わせる模範

中学生の行動は小学生に「将来、自分たちも」と思わせる模範

 

 釜石東中の米慎司校長は「生徒たちは真剣そのもので、避難のあり方、防災に対する考え方が育ってきているのを感じる。本校の目標に掲げる主体性がこの場面でも発揮されていた」と評価。両校は東日本大震災の経験を基に系統的な防災教育に取り組み、小学校で身に付けた知識は中学校での実践力育成に生かされている。「防災は、自然と共に生きる私たちが知恵を持って生き抜いていくための備え。身近なものとして捉えてほしい」と米校長。

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