仙人秘水仕込みの酒 浜千鳥が釜石鉱山で貯蔵開始 大島高任生誕200年記念で“物語”を仕込む

釜石鉱山の水で仕込んだ酒を5年間貯蔵のため坑道に運び入れる浜千鳥の社員ら=6月16
釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は、釜石鉱山の“仙人秘水”で仕込んだ日本酒を、同鉱山の坑道で長期貯蔵する取り組みを始めた。1857(安政4)年にこの地で、日本初の鉄鉱石による鉄の連続出銑に成功した大島高任(1826-1901)の生誕200年を記念した企画。坑道貯蔵は同社にとって初の試みで、高任の没後130年にあたる5年後の2031年に取り出す予定。“鉄のまち釜石”で生まれる新たなストーリーの地酒。低温熟成、磁場による効果で、どんな味わいに仕上がるか、期待が膨らむ。
貯蔵するのは、同鉱山の大峰山(標高1147メートル)地下600メートルから湧き出す“仙人秘水”で仕込んだ純米吟醸。720ミリリットル入りの瓶で1千本を、高任の誕生日である6月16日に坑内に入れた。同社社員らが坑道走行用カートに積み込み、海抜550メートルの坑口から約500メートル入った地点に設けた酒類蔵置場(税務署の許可を受けた一時保管場所)に運んだ。

個別に乾燥剤入りのビニール袋に入れた「純米吟醸」(720ミリリットル入り)をカートに積み込む

海抜550メートルに位置する坑口からいざ搬入!ここから約3キロの地点で「仙人秘水」を採水している

看板が掲げられた保管場所の扉を開けて、カートが後進
坑内は年間を通じて気温約11度。同社によると、温度変化が少なく長期の低温貯蔵に適しているほか、光や振動の影響がないため、劣化せずに安定した熟成が可能になるという。磁鉄鉱の鉱脈があることから、磁場の効力による味の変化も期待している。
同社が仙人秘水で仕込む酒は「仙人郷」シリーズとして商品化されている。1991年10月には純米酒、95年11月には本醸造を発売。さらに品質の高い酒をと今冬、新たに仕込んだのが純米吟醸で、原料米は大槌町で栽培された本県オリジナル酒米「吟ぎんが」。口当たりが柔らかく、果物のような吟醸香がほのかに香る。貯蔵分以外は今年11月に販売を開始する。

カートから酒瓶が入ったケースを降ろし、保管場所に運ぶ。照明がなければ辺りは真っ暗

貯蔵する「純米吟醸」を手に5年後を楽しみにする浜千鳥の新里進社長
今回の取り組みは、「単なる貯蔵や保存ではなく、『物語を仕込む。未来への贈り物を創る』がコンセプト」。新里社長(68)は「ここで採れた水で仕込んだ酒が再び、この場所へ戻る。そういう意味では遺産の中にもう一つ遺産ができるような…」と、魅力的なストーリーをアピール。5年間“寝かせた”後の気になる味は、ふたを開けてみないと分からないが、「滑らかな感じで、飲んだ時に体に吸い込まれていくような…そんなお酒になれば」と楽しみにする。貯蔵酒は一般への販売を予定する。

釜石の製鉄の歴史を物語る場所で、どんな味わいが生まれるのか? 期待が高まる
貯蔵酒の搬入に立ち会った釜石鉱山会社総務部総務課の千葉慎吾課長代理(42)は「ストーリー的にはすごくロマンを感じる。坑道での貯蔵がどんな変化を及ぼすのかも楽しみ」と浜千鳥の挑戦に注目。外部企業による坑道利用に関しては、「当社でも何ができるか探っている部分もあるので、この取り組みが今後の坑道活用検討へのいいきっかけになるのではないか」と話した。

釜石新聞NewS
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