学校以外で地震、津波に遭遇したら… 釜石小 17年目の下校時避難訓練 児童ら自ら判断し高台へ
訓練・大津波警報を受け高台の仙寿院境内に向かう釜石小児童=11日
釜石小(五安城正敏校長、児童79人)は11日、学校管理下以外で地震、津波が発生した場合を想定し、全校児童の下校時津波避難訓練を行った。帰宅途中または帰宅後に、児童が自ら判断し、適切な避難行動をとれるようにするのが狙い。同校は2011年の東日本大震災時、下校していた全児童184人が迅速な避難で自らの命を守った。08年から取り組んできた同訓練の成果とされる。その “防災のDNA”を受け継ぐ現児童らは本訓練にも真剣に取り組み、いざという時の行動を体で覚えた。
この日、1、2年生は午後2時20分に、3~6年生は午後3時10分に下校した。午後3時30分ごろ、市の防災行政無線で大地震発生の緊急地震速報が流れると、それぞれにいる場所で頭を守る低姿勢(シェイクアウト)をとった。下校中の児童は周りの危険を回避しながらその場でかがみ、ランドセルなどで頭を覆った。自宅など建物内にいた児童はテーブルの下などに入り、揺れがおさまるのを待った。
写真左:下校時の地震発生を受け、ランドセルで頭を守り低い姿勢をとる児童(訓練) 同右:大津波警報、避難指示発令の放送で高台への避難を開始(訓練)
市指定津波避難場所・仙寿院に向かう階段を懸命に駆け上がる
続いて大津波警報が発表され、避難指示が発令されると、その場から最も近い高台を目指して駆け出した。転ばないように足元にも注意しながら、階段や坂道を早足で駆け上がった。市の津波避難場所に指定されている大只越町の寺、仙寿院には同町や只越町などに自宅のある児童らが次々に避難。地域住民や天神町のかまいしこども園の園児らも訓練に参加した。訓練開始から10分後、同所担当の教諭が避難した児童の名前、人数などを学校に報告した。仙寿院への避難児童は1~6年の10人。
頂上は間もなく… それぞれのペースで境内を目指す
釜石小が訓練の声掛けをした、かまいしこども園の園児も天神町側の階段から上ってきた
訓練を振り返る場では▽地震発生時、頭を守りながら周りに危険がないか見ることができたか▽津波避難場所に素早く避難できたか▽真剣に取り組むことができたか―を挙手でチェック。一連の自分の行動がどうだったかを確認した。
帰宅後に防災無線が鳴った福士愛梨さん(5年)は「すぐに机の下に隠れて周りを見た。(避難路は)急坂で疲れたが、いざという時は全力を出して逃げ切りたい」と気を引き締めた。山﨑詩さん(同)は1年時から訓練を重ねてきたことで、「身を守りながら素早く行動できるようになってきた。家にいる時はここに避難すると決めている」と成長をのぞかせた。
「避難の態度はとても立派だった」と話したのは、大只越2丁目町内会の柏木成一郎会長(70)。災害時に必要なものを入れた防災リュックを背負って、自身も訓練に参加した。「実際の災害時は思うように行動できないことも。周りの人や先生の言うことを聞いて逃げてください。家から避難する時はこれを持って逃げるというのを決めておくといい」とアドバイス。急傾斜という土地柄、「山や建物の崩落が心配。シカが多いのも気になる」と、避難の妨げも考えられる環境変化を指摘した。
避難完了後、自分たちの行動を振り返り。柏木町内会長は非常時の持ち出しについてもアドバイス
大町の薬師公園には児童約20人が避難。澤舘仁さん(6年)は、放送をしっかり聞いて行動することを意識した。目標を達成できた様子で、「津波がきた時は焦らないで、冷静に行動することを大切にしたい。高いところに避難できたら、先生たちの指示をきちんと聞く」と実際の災害時を想定した。
反省会では「放送が鳴ってすぐに身を守り、素早く避難できた」「家にいた時にサイレンが鳴ってびっくりしたけど、避難場所に早く来られて良かった」などの声が聞かれた。付き添いの教諭は、「足元に気をつけて」と自分から声掛けしていた6年生を評価。スクールガードとして普段から児童を見守る地域住民は震災時の避難行動に触れ、「訓練を繰り返し、身に付いていた結果。みんなも自然に動けるようになったらいい」と訓練の重要性を示した。
学校に近い薬師公園に避難する釜石小児童(正面上り口)
薬師公園へのルートは正面以外にも。児童らは最短で上れるルートを選択
落ち葉や濡れた路面で転ばないよう気を付けながら避難。頂上広場では反省会も行われた
同校では毎月11日を「釜小ぼうさいの日」と定める。防災安全少年団の6年生が中心となり、防災や安全に関わる話を校内放送で流したり、防災市民憲章を唱和したりしながら意識を高める工夫をしている。この日に合わせて校内での避難訓練なども実施。下校時避難訓練は年1回、10月に行っている。
学区内には高台の同校を含む計8カ所の市指定津波避難場所があり、訓練参加者全員が各所に避難することができた。緊急地震速報から始まった訓練で、児童らは避難の流れを確認。同校によると、シェイクアウトは多くの児童が実践できていたが、緊急地震速報を聞いてすぐに避難場所に向かった児童もいた。「まずは建物の倒壊などに巻き込まれないよう、安全な場所でシェイクアウト。ある程度、揺れがおさまった後、津波注意報や警報の発表で避難場所への避難を開始する」ことを再度、周知する。
釜石新聞NewS
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