みんな同じ笑顔だった…ウクライナ、ロシアの小児病棟の子どもたち 釜石で写真展
釜石市民ホールギャラリーで開催中の「3つの国の小児病棟で出会った笑顔」展
ウクライナ、ロシア、ベラルーシ3国の小児病棟などで撮られた笑顔の子どもたちの写真を紹介する「3つの国の小児病棟で出会った笑顔」展が、釜石市大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会(名古屋市、大棟耕介理事長)が主催。観覧無料、29日まで。
ホスピタルクラウンとは、小児病棟で入院中の子どもたちにクラウン(道化師)がパフォーマンスを行う活動で、病気と闘う子どもたちに笑顔を届けている。同協会には約120人のクラウンが所属。東日本大震災や熊本地震などの災害被災地でも活動し、地域住民を元気づけた。
東日本大震災後に大船渡市で行われた活動の様子。後列左から2人目が大棟理事長=NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会提供
大棟理事長は2005年から4年間ロシアに通い、小児病院や障害者施設で道化師の姿でパフォーマンスを披露。08年から6年間はウクライナを訪れ、12年と13年にはベラルーシを訪問した。そんな思い入れのある地域で今起こる現実、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に心を痛め、企画したのが今回の展示。「現在のウクライナは悲惨な戦争の状況を伝えるものばかり。だが、少し前まで、3つの国の病院の中には同じ笑顔があった。その事実を知ってほしい」とメッセージを寄せる。
会場には、大棟理事長らのパフォーマンスを楽しむ3カ国の子どもたちを写した50点が並ぶ。穏やかな笑み、はにかみ、喜び―さまざまな表情を見ることができる。どの国で撮られたのか表記はなく、あえて「まぜこぜ」に展示しているのが特徴。笑顔に国境はない―。そんな思いを込めている。
3カ国の小児病棟で撮影された子どもたちの笑顔が並ぶ
来場者に展示写真やクラウン活動を説明する梅沢さん(右)
釜石での展示を担当するのは、クラウンネーム「だぁちゃん」として活動する甲子町の梅沢義明さん(51)。西東京市出身で、震災を機に15年に大槌町復興推進隊の一員として移住した。17年夏ごろからクラウンとして本格始動。県内を中心に子どもたちと触れ合ってきた。今回、釜石市がウクライナ支援を表明していることから、同協会に写真展の開催を申し入れた。
風船の剣を握り笑顔を見せる子どもたち=NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会提供
「かつて風船の剣を持っていた子どもたちが、今、本物の銃を手にして戦っているかもしれない」。展示されている写真が撮影されてから約10年が経過。梅沢さんは「…切ない。今のウクライナでは病院が機能していない。何気ない写真だが、みんな笑うことができていた。『同じ笑顔』ということに注目してもらい、何かを感じてほしい。平和、笑顔を取り戻してほしい」と願う。
同協会ではウクライナへの支援金や応援メッセージを募っていて、展示会場にチラシなどを用意。集まった支援金はウクライナ・ジトーミル州の小児病院に届ける予定という。
この写真展は、6月1~17日まで、大槌町文化交流センター「おしゃっち」でも開かれる。展示や支援金への協力に関する問い合わせは梅沢さん(電話070・2645・1624)へ。
釜石新聞NewS
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