東日本大震災11年、釜石・根浜地区で慰霊祭 「みんなが幸せに」住民ら冥福祈る
11日を前に根浜地区で行われた震災慰霊祭で、黙とうする住民ら=6日
東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた釜石市鵜住居町根浜地区で6日、発生から11年となる11日を前に慰霊祭が行われた。高台造成地に整備された復興団地の住民ら約30人が地震発生時刻に合わせ、黙とう。犠牲者を悼みながら、「みんなが幸せに安心して暮らし続けることができる地域にする」と思いを分かち合った。
根浜親交会(前川昭七会長)が震災後から継続する追悼行事。住民らは同地区で犠牲になった15人と共に、津波で尊い命を奪われた全ての犠牲者を思い、午後2時46分に黙とう。集会所に設けられた祭壇に白菊を手向け鎮魂や安寧の祈りをささげた。
前川会長、妻良子さん(いずれも69)は、津波で次女美知さん(当時32)を亡くした。漁業の傍ら民宿を営む2人は「多くの人から心を寄せてもらい、ありがたい10年。無我夢中で、あっという間だった」と振り返る。震災から11年、強く思うのは「明日の幸せを見つけ出せる、平和な暮らしの大切さ」。相次ぐ災害、人災と言える戦争が繰り返される現実に心を痛め、合わせる手に「命の尊さを考えてほしい」と願いを込めた。
大切な人を思い、手を合わせる前川会長
根浜地区は震災前、67世帯約180人が暮らした。最大18メートルの津波が襲ったが高い防潮堤は拒み、震災前と同じ5・6メートルの高さを維持。海抜20メートル超の高台造成地に集団で移転し、現在は35世帯約100人が暮らす。
慰霊祭の後、津波記念碑が建つ団地内の公園では「お地蔵さん」に手を合わせる住民の姿も見られた。「こっちも頑張っているから、見守っていて」。同会事務局長の佐々木雄治さん(66)は、宮古市で暮らす長女岩渕理紗子さん(28)と足を運び、津波で犠牲になった妻純子さん(当時53)、実父、実姉、義母の冥福を祈った。
海を望む高台の公園に並ぶ「お地蔵さん」に思いを託す佐々木さん親子
佐々木さんは津波の夢で目が覚める日々が続いたというが、ここ数年はほとんどなく、「月日の流れが解決してくれた」と穏やかな表情を見せる。そして、かみしめるように「あの日のことは忘れられない」と口にするが、記憶が薄れていくという感覚もある。ただ、海を望むこの公園に来ると、「自然災害は形、時、規模、何もかも予測できない。高台であっても絶対はない」と、あらためて思う。「海と共存する地域だからこそ、いざという時、自らが避難する意識を強く持たなければ」。津波の教訓を地区全体で共有し、安心して暮らせるまちづくりを続けていく―と前を向いた。
釜石新聞NewS
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