農福連携・甲子柿 出荷準備着々~障害者福祉施設利用者らシール貼り作業
透明の容器に2種類のシールを貼る女性。やさしい手つきで作業に励んだ
農業の人手不足を解決し、障害者の働く場を確保する「農福連携」の取り組みが、釜石市内で進められている。甲子(かっし)柿の里生産組合(藤井修一組合長)は、出荷準備作業の一部を市内2カ所の福祉作業所に委託。NPO法人遠野まごころネット(佐藤正市理事長)が運営する甲子町の障害者自立支援施設「まごころ就労支援センター」(山本智裕施設長)で8月24日、出荷用の箱などに名称シールを貼り付ける作業が始まった。
甲子柿は、渋柿の一種の小枝柿を「柿室(かきむろ)」と呼ばれる暗室に入れ、1週間ほどいぶして渋抜きしたもので、釜石を代表する秋の味覚。完熟トマトのような甘さとゼリーのような食感、甘さが特長だ。
今年3月、地域ならではの農林水産物や食品のブランドを守る国の「地理的表示(GI)保護制度」の対象に登録された。専用のGIマークを付けて販売できることから、地域ブランド産品としての差別化や販路拡大に、生産者らが寄せる期待は大きい。ブランド化の機運が高まり、20ほどだった組合員数は27個人・団体に増えている。登録を受け、出荷用化粧箱や食品包装容器にGIマークを付ける必要があり、同施設などに作業を依頼した。
GI保護制度の登録証や甲子柿のPRポスターがある空間で作業が進められた
この日は、同施設を利用する18~64歳の5人が作業に参加。利用者はGIマークとともに、「甲子柿」とブランド名が印刷されたシールを一つ一つ丁寧に貼り付けていった。佐藤弘一朗さん(26)は「指定されたところに正確に貼ろうと集中して頑張った。マークがあることで、買った人がおいしいんだなと思ってくれたらいい」と熱心に手を動かした。
「角に合わせてきっちりと」。集中して作業に取り組む施設利用者ら
シール付けは化粧箱2000個、容器8000個を予定し、2施設で分担する。10月初旬には柿の実を磨く仕上げ作業も開始。今季は10月中旬からの出荷が見込まれており、11月下旬までのシーズン中は継続して取り組む。
農福連携は、高齢化する生産現場の労働力確保と、働く機会の拡大を図る障害者福祉事業者の農業分野参入や社会参画による生きがいづくりにつなげる取り組み。作業を見守った同組合事務局、市水産農林課の櫻庭理恵主任は「双方の課題を解決するウィンウィンの関係が作られている」と強調した。市は本年度、農福連携に関する補助金事業を設けており、甲子柿以外の作物での活用も期待する。
釜石新聞NewS
復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム