大槌湾を拠点に三陸の海を学べる展示施設「おおつち海の勉強室」開室~子どもたちの探究心を伸ばせる環境を
オサガメのはく製が出迎える「おおつち海の勉強室」の展示室
大槌町赤浜の東京大大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター(青山潤センター長)は、三陸の海の生物や環境などを学べる展示施設「おおつち海の勉強室」を新設。18日、開室記念式典を行い、一般開放を始めた。同大の研究成果を地域に還元しながら、地元の海について共に考える交流・連携拠点を目指す。
同施設は震災の津波で被災したセンターの旧研究実験棟跡地に建設。鉄筋コンクリート造り平屋建てで、建物面積75平方メートル。センターのウミガメ研究者でイラストレーターの木下千尋さんが海の生き物を描いた外壁が目を引く。
施設の入り口で行われた式典出席者によるテープカット
室内ではテーマを変えながら行う企画展示があり、今は「大槌湾の藻場と生物多様性」と題し、生物標本約120点が解説を添えて展示される。2019年にセンターの研究者によって発見された新種のカニ「オオヨツハモガニ」の紹介も。生きたヤドカリやウニ、ヒトデは水槽で見ることができる。写真や動画が見られるタッチパネル式の生き物図鑑、大槌湾の水温、風速・風向データや施設から臨む蓬莱島(ひょうたん島)の映像をリアルタイムで公開するモニターなどもある。
大槌湾の藻場の生物標本が並ぶ企画展示
入り口の「みんなでつくる大槌湾マップ」は、センターの調査活動を地図とともに掲示するほか、一般の人が見つけた生物を写真などで報告すると、研究者が調べて返事を書き、マップ上に反映させる展示。メールや投函での情報提供を呼び掛ける。
三陸はウミガメの回遊コースになっていて、センターでも研究が盛ん。施設では、甲羅だけで長さ1・2メートルもあるオサガメの子のはく製が展示され、来遊する夏季には屋外水槽で生きたウミガメを観察できる。
18日の式典には関係者約40人が出席。テープカットで開室を祝い、施設見学が行われた。説明した大土直哉助教(34)は「自然に興味を持つ子どもたちの探究心を伸ばしてあげられる環境が必要。施設を使って知識を深め、次のステップにつなげてもらえたら」と期待。この日は、センターと連携し海の学習に取り組む重茂中(宮古市)の生徒や、研究者と調査活動などを共にする大槌高「はま研究会」のメンバーも訪れ、新施設の活用に夢を膨らませた。
大土直哉助教(右)から説明を受ける重茂中の生徒ら
青山センター長は「地元だけでなく観光客にも三陸の海の魅力を発信する場にしたい。将来的には、古里の海に思いを持つ人たちが企画や運営を担い、まちとして〝おらほの海〟を全国にアピールできれば」と話す。施設への入場は無料。当面は新型コロナウイルス感染予防のため、事前予約で見学を受け付ける(解説員が同行)。申し込みは同センター(電話0193・42・5611)へ。
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