助け合いの精神で、家族ぐるみでマスク作り〜ボーイスカウトの「ちかい」体現、2千枚を学校に


2020/06/05
復興釜石新聞アーカイブ #地域

子ども用のマスクを手作りする末永さん一家

子ども用のマスクを手作りする末永さん一家

 

 新型コロナウイルスの感染拡大でマスクが不足する中、釜石市野田町の末永正志さん(70)一家は、布製のマスクを手作りし、子どもたちに贈る取り組みをしている。「みんなが困っている時に役に立てられたら」「材料が無くて作れない家庭のために」と、家族4人で3月下旬に製作を開始。これまでに作り上げた数は2千枚を超える。

 

 元市職員の末永さんは現在、妻啓子さん(70)、長女久美子さん(44)、次男和磨さん(41)と暮らしている。ボーイスカウト(BS)岩手連盟釜石第2団の団委員長としても活動している。

 

 県内では感染者が出ていないことから、4月に学校の新学期がスタート。活動を自粛しているBS団員の母親らから「学校からマスク着用を伝えられたが、手に入らない。子ども用のマスクも少ない」と聞いたことが、マスクづくりのきっかけとなった。

 

 BSの「ちかい」にある「いつも他の人を助けます」を体現する取り組みだと感じた末永さん。当初は団員約60人分を作って終える考えだった。

 

 そんな中、啓子さんの元に静岡県在住の知人、中野富士恵さん(釜石出身)から着物の端切れなどが届いた。布が豊富に手に入ったことから、市内の小学校に贈ることを一家で決めた。

 

 サイズは大中小の3種類で、試行錯誤して型紙を作った。色はピンクや黄など豊富で、柄は動植物や水玉など多様。手に入りにくい材料もあり、裏地に使うガーゼはシーツや布団カバー、耳に掛けるゴムひもは水切りネットを購入し代用した。

 

 布を切るのは末永さん、ゴムを切るのが和磨さん、袋詰めは久美子さん。啓子さんは朝から晩までミシンを操って縫った。BSに所属する大学生2人とその家族も一部作業に協力した。

 

 啓子さんは「助け合いの精神で協力してくれたみんなのおかげ」と感謝する。

 

 4月中旬の釜石小を皮切りに、1カ月かけて市内9小学校全てに届けた。その数は1560枚。幼児向けにも作り、17日までに3つの保育施設に計200枚を贈った。

 

 この取り組みのエネルギーになったものが、もう一つある。東日本大震災で被災し、多くの支援を受けたことだ。

 

 末永さん一家は只越町の自宅が全壊し、震災のあった2011年秋に現在の住宅に移った。今回活躍するミシンも知人からの支援。「お世話になった恩返しがエネルギー源」と家族全員でうなずく。

 

 そして、家族の絆を深める機会にも。久美子さんは「マスク作りをきっかけに一体感が生まれた。家族で力を合わせたことが、誰かを喜ばせることにつながり、うれしい」と目を細める。

 

 4月下旬、唐丹小からマスクを着けた児童の写真が添えられたお礼のメッセージが届いた。子どもたちの笑顔を思い描きながら手を動かす和磨さん。「マスクもファッションとして楽しむ時代だから」と満足げだった。

 

 コロナに負けるな―。そんな願いを込めた末永さん。子どもたちが安全に暮らすことのできる環境が戻るまで、もう少し取り組みを続ける考えだ。

 

(復興釜石新聞 2020年5月30日発行 第888号より)

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