馬との触れ合い 多様な刺激に、障害児向け療育プログラム提供〜三陸駒舎「ホースセラピー」活用、黍原さん 思いを実現


2018/01/26
復興釜石新聞アーカイブ #地域

馬のぬくもりに触れ、命の大切さも感じながら世話をする男児(左)。自然と表情が和らぐ=12日午後

馬のぬくもりに触れ、命の大切さも感じながら世話をする男児(左)。自然と表情が和らぐ=12日午後

 

 馬との触れ合いを通じた心身のケア療法「ホースセラピー」に取り組む釜石市橋野町の一般社団法人三陸駒舎(寄田勝彦代表理事)が、新たに障害児向けの療育プログラムの提供を始めた。昨年12月に国の障害児福祉サービス事業所の指定を受け実施。同サービスにホースセラピーを取り入れた事業所は県内では初めてで、震災のストレスや生活環境の変化に適応が難しい子どもらを馬の力で支援する。

 

 同法人が開設した「児童デイサービスさんこま」は、心身に障害や発達の遅れが見られる18歳以下(場合によって20歳まで)の子どもを対象とする。個人の特性や発達の状況に合わせて療育計画を作成。自主的に取り組めるプログラムで、日常生活における基本的動作の向上、社会性、協調性などの育成を促す。

 

 築90年の古民家を改修した活動拠点で、同法人理事の黍原豊さん(40)と馬房の掃除、ブラッシング、乗馬など約1時間の活動を行う。馬の世話は「他者の役に立てる」という自己有用感を生み、馬具の取り付けなどの作業で手先の器用さや順序立てて考える力も養われる。「体を使うことで脳が刺激され、できることが増えてくると、自信や安心が生まれ、自己肯定感にもつながる」と黍原さん。

 

黍原さん夫妻のサポートで乗馬を楽しむ

黍原さん夫妻のサポートで乗馬を楽しむ

 

 大槌学園4年の男児は、週3回のプログラムを利用する。12日は6回目の活動で、雌の道産子馬アサツキ(7)の世話をして、乗馬を楽しんだ。黍原さん、妻の里枝さん(43)がやさしく声をかけながら活動をサポート。男児は道具の扱いにも慣れてきて、乗馬では見事なバランス感覚を見せ、笑顔を輝かせた。黍原さんによると「回を重ねるごとに馬とのコミュニケーションが深まり、必要な作業も手際が良くなっている」という。

 

 療育の主軸とするのは「感覚統合療法」。感覚統合とは脳に入ってくる感覚を整理したりまとめたりする機能のことで、感覚刺激の体験を増やし、うまく刺激を受け入れられるようになると、周りの状況に応じた行動が取れるようになっていくという。馬との触れ合いには多様な刺激があり、同療法の発祥地米国では多くの療育施設で馬を導入。心身発達に効果を上げている。

 

 2015年の法人設立当初から「いずれは障害を持つ子どもたちのための事業を」と考えていた黍原さん。親子体験会や支援学校でのセラピーを重ねる中で、定期的なプログラムを望む声が増えたことも事業化を後押しした。「馬は周囲の空気を読む力が強く、人間の気持ちを敏感に感じ取る。言葉を使わないコミュニケーションで馬が返してくれる反応は、子どもたちに多くの学びをもたらす」と、馬との出会いを薦める。

 

 個別活動のほかグループでの活動にも対応する。利用料金(自己負担額)は1回687~837円(利用形態による)。原則、水・木曜日が休みで、利用は午前9時~午後6時まで。午後は送迎も可能。問い合わせは黍原さん(電話090・7070・7378)へ。

 

(復興釜石新聞 2018年1月20日発行 第657号より)

 

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