一人暮らしを癒やす ひな飾り〜平田復興住宅二川さん、震災後に集めた30点


2017/03/14
復興釜石新聞アーカイブ #地域

平田復興住宅の玄関を彩るひな飾り。震災後、二川さん(右)が集めた約30点が、心温まる世界をつくり出す

平田復興住宅の玄関を彩るひな飾り。震災後、二川さん(右)が集めた約30点が、心温まる世界をつくり出す

 

 釜石市平田の復興住宅で暮らす二川訂子さん(80)は、震災後に集めた30点以上のひな飾りで自宅の玄関を彩っている。同住宅の住民らが訪れ、小さなひな飾りが作り出す、ほのぼのと心温まる世界を味わっている。

 

 震災前から平田に暮らす二川さんは、季節に合わせた模様替えが好きで、正月、ひな祭り、クリスマスなどの小物を集めては自宅の玄関に飾って楽しんできた。震災で自宅が全壊し、仮設住宅での生活を経て2014年春に現在の住まいに移ったが、その間に少しずつ小物を収集。飾り付けも続けてきた。

 

 ひな飾りの大半は高さ5~20センチほどの「男びな」と「女びな」が対となっており、市内の雑貨店などで購入してきた。陶磁器製や布製のもので、愛らしい表情が印象的。タペストリー、つるしびな、同住宅の住民が折り紙で手作りしたつるし飾りもある。

 

 「来た人が戸を開けて飾りを見た時の表情を見るのが楽しみ。喜んでもらうとうれしい」と二川さん。ひな飾りを見にきた復興住宅の住民と会話も楽しんでいる。小野寺民子さん(75)は「いろいろ大変なことがあっても、ここに来ると癒やされる。目の保養」と柔らかな表情を見せた。

 

 震災から6年。二川さんは仮設住宅での生活が1年ほど過ぎた12年10月に夫幸一さん(享年78)を亡くし、現在は一人暮らしだ。普段は好きな音楽を聴いたり、テレビを見ながらゆったりとした時間を過ごしている。震災前から変わらず続ける季節の飾り付けが自身の生活の彩りにもなっている。ただ、「鉄の扉を閉じて家にいるばかりじゃ息がつまる」と週2回ほど、月日の流れの中で深まった仮設や復興住宅、地域の仲間とともに集会所でカラオケを楽しんで発散。「誰に何を言われようが、生きているうちは小物を集めて飾り続けるし、やりたいことをやって楽しむ」と笑う。

 

 ひな飾りは3日の桃の節句でお片付け。次回の模様替えは端午の節句(5月5日)にちなんだ五月人形を飾る予定だ。

 

(復興釜石新聞 2017年3月8日発行 第569号より)

 

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