漁業就労へ、尾崎白浜で体験講座〜県外から8人が挑む、漁師の仕事に理解深める
慣れない洋上作業にも、カゴ漁の成果に海の豊かさを体感した
本県漁業の担い手を全国から発掘しようと、県は12日までの3日間、「浜の魅力体験講座」を釜石市尾崎白浜地区で行った。東京都、埼玉県、秋田県などから男性8人が参加。漁船、養殖に分かれ、地元漁業者の指導で漁業体験に取り組んだほか、若手漁業者との交流を重ね、漁業の魅力や漁師の仕事に理解を深めた。
沿岸広域振興局水産部が昨年度から実施する「いわて三陸漁業担い手確保・人づくり対策事業」の一環で、企画・運営はパソナ東北創生(釜石市甲子町、戸塚絵梨子社長)が受託した。原則40歳までの男女10人を募集したところ、20~48歳の男性が応募。参加者は11日午前5時、漁船と養殖に分かれて体験に出発した。
漁船の操業体験は、尾埼灯台の東2キロでの「かご漁」。漁業佐々木洋裕さん(46)の指導でかごを引き上げると、ミズダコ、カレイ、ソイ、アブラメ、ドンコ、タナゴ、ハゼなど、たくさんの獲物が入っていた。
養殖漁場は漁港に近い水域にある堀内孝一さん(36)のホタテ施設で体験。ネットを引き上げ、選別のポイントなどを学んだ。
ホタテの分散作業で、養殖漁業を体験、その意味を学んだ
漁港に戻り、「番屋」で昼食。釜石湾漁協白浜浦女性部の佐々木淳子部長ら6人が「浜の料理フルコース」を振る舞った。夜には講師の2人と若手漁業者10人を交えて懇親会。漁業経営や漁家の生活などについて、和気あいあいと情報を交換した。
受講者との懇談会では、若手漁師が海の魅力と課題を誠実に語り伝えた
尾崎白浜地区には、2年前に漁師を志して神奈川県鎌倉市から移り住んだ山﨑寛さん(43)がいる。家族の介護などのため企業を退職。あこがれていた漁業を目指して情報を集め、昨年10月、釜石湾漁協の漁業権を得た。
「漁師の人たちが受け入れ、応援してくれた」と山﨑さん。「1年後に、やっと浜で働くための筋肉が付いたと感じた。自立には遠く生活にも余裕はないが、まだまだ学ぶことは多く、いろんな仕事は面白い。結婚もしたい」と意欲を語った。
今回の漁業体験参加者の最高齢は、秋田県横手市の山本栄司さん(48)。伝統建築・数寄屋造りを専門とする技能士で、好きな海釣りから漁業に目を向けるようになったという。
山本さんは「昨年暮れ、宮古市重茂漁協での体験はショックだった。大震災からすぐに立ち上がった瞬発力。後を継ぐ若者や子どもがあふれ、活気があった。海は豊かだと分かった。ほかの体験講座も受けてみる」と意欲を示した。
岩手大釜石サテライトを協働先とする釜援隊(釜石リージョナルコーディネーター)の齋藤孝信さんは「受講者が参加した動機は多様だが、この体験講座で漁業への理解が深まり、広まることは確か。新たな漁業就業者が生まれれば」と期待した。
(復興釜石新聞 2017年2月15日発行 第563号より)
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