子どもたちの笑顔のために〜こすもす公園「希望の壁画」奮闘記が絵本に


2016/02/20
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

完成した絵本を手にする藤井了さん、妻のサエ子さん、作者の指田和さん

完成した絵本を手にする藤井了さん、妻のサエ子さん、作者の指田和さん(左から)

 

 子どもたちの笑顔のために──と、震災後に釜石市甲子町洞泉につくられた「こすもす公園」と、隣接する工場の外壁に描かれた「希望の壁画」。その取り組みにかかわった人たちが、壁画を完成させるまでの奮闘記が絵本になった。埼玉県鴻巣市の児童文学作家、指田和さん(48)が出版した「あしたがすき」(ポプラ社)。指田さんは「復興はまだ先だと思うが、震災という大変な事が起こっても、みんな必死に生きている。それをサポートする人もいる。大人が動くことが子どもの喜びに、子どもの笑顔が大人の頑張る力につながる。そういったことを知ってほしい」との思いを込めた。

 

 「大つなみがきてものすごくビックリした。つらいこと、かなしいことがいっぱいあった。9歳で死んじゃうのかなと思った」。絵本では、こんな言葉がつづられた絵日記を目にした藤井了(さとる)さん(69)、サエ子さん(71)夫妻の公園づくりの取り組みを取り上げた。

 

 恐ろしい思いをした子どもたちに必要なものは、つらい思い出を忘れられる楽しい場所をつくることではないか―。夫妻は、甲子町で運営している農家レストラン前に公園を作った。そこに子どもたちの笑顔が広がったある日、一人の女の子が公園の前に立つ工場の黒ずんだ灰色の壁を見ながらつぶやいた。「つなみ、みたい」。これをきっかけに始まった壁画づくりに、被災した子どもが大人の力を借りて心の傷を癒やし回復していくまでの日々を織り交ぜて描いた。

 

 指田さんは、出版社で子どもの雑誌、家庭雑誌などの編集を経て、フリーに。いのちや平和、自然に関するテーマを取材し、著書には阪神淡路大震災を題材にした「あの日をわすれない はるかのひまわり」(PHP研究所)がある。

 

 震災直後、被災した親類を心配して釜石入りしたという指田さん。ボランティアとして釜石に通い続けながら取材し、2013年に震災の津波から命を守り抜いた釜石市の子どもたちの避難行動を題材にした絵本「はしれ、上へ!」(ポプラ社)を出版している。

 

 その後も被災した旅館の手伝いなどで釜石に滞在していた2014年6月頃、公園と壁画のことを知り、「後方支援の必要性をしみじみ感じた」と絵本作りを決め、約1年半かけて取材。大人が子どもたちのために力を合わせて作った空間を記録に残す絵本に仕上げた。

 

 絵は、壁画を描いたタイ・バンコク在住の画家、阿部恭子さんが担当。あとがきに「釜石の強い気持ちは前を向いていた。未来の絵を描こう、できるだけきれいな色で、たくさんの色で、よろこびしかない絵にしよう。ずっと釜石の人の心のなかで、太陽がふりそそいでくれますように」とメッセージを寄せた。

 

 指田さんは現在も釜石に滞在し、公園やレストランの手伝い、甲子柿の食ブランド化に向けた活動などに協力。「記録係が私の役目。釜石のことを考えてできることをやっていきたい」と話した。

 

 絵本はB4変形判、40ページ。全国の書店で販売(税別1300円)している。

 

絵本をプレゼント

 

「こすもす公園」と「希望の壁画」の完成までを描いた絵本「あしたがすき」

「こすもす公園」と「希望の壁画」の完成までを描いた絵本「あしたがすき」

 

 釜石新聞社は、指田和さんから絵本の提供を受け、3人にプレゼントします。希望者は、はがきに住所、名前、年齢、電話番号を記入し、釜石新聞社「あしたがすき」絵本プレゼント係。応募締め切りは2月27日(当日消印有効)。希望者多数の場合は抽選の上、贈呈者を決定します。応募・問い合わせは釜石新聞社(〒026-0044 釜石市住吉町3番3号/電話0193-55-4713)へ。絵本をプレゼント

 

(復興釜石新聞 2016年2月13日発行 第461号より)

 

復興釜石新聞

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