岩手大学釜石キャンパス、教育研究棟完成〜水産業の振興へ、地域との連携探る


2019/07/08
復興釜石新聞アーカイブ

釜石キャンパス教育研究棟の完成を祝いテープカットする岩手大の岩渕学長ら関係者

釜石キャンパス教育研究棟の完成を祝いテープカットする岩手大の岩渕学長ら関係者

 

 釜石市平田の岩手大釜石キャンパスに、総合教育研究棟(水産系)が完成し、1日、竣工(しゅんこう)記念式典が行われた。水産業と復興の担い手を育てる釜石キャンパスの教育研究環境を充実させるため、国、地方(県と市)、大学が連携し整備。関係者に施設を公開したほか、水産教育の専門コースで学ぶ学生らによる研究紹介もあった。出席した約100人の関係者らは、研究棟の完成が海洋・水産分野の研究活動の活性化を促進させるものとして期待を寄せていた。

 

 震災以降、復興推進や地域再生への課題解決を使命としてきた同大は2016年度に学士課程の全学部を改組。農学部内に「食料生産環境学科水産システム学コース」を設置した。17年度には大学院修士課程の3研究科を統合した「総合科学研究科」を新設。「地域創生専攻・地域産業コース」に「水産業革新プログラム」を設けた。

 

 釜石キャンパスは、13年に整備された同大の研究施設「釜石サテライト・三陸水産研究センター」に併設。盛岡市上田のキャンパスで一般教養などを学んだ水産コースの学生が3年生後期から学び、卒業研究などに取り組む。

 

 現在、水産コースの1期生14人(4年)が学ぶ。専門の講義を受け、希望する研究室で地域漁業の課題などをテーマに研究活動を進行中。今年10月から3年生十数人も釜石での活動を開始する見込み。また、同プログラムを専攻する大学院生も対象となるが、現在釜石での活動者はいない。

 

 新たな研究棟は、鉄筋コンクリート造り2階建て、延べ床面積約805平方メートル。1階に水産実験室2部屋、無菌実験室、隔離飼育室などを備えた。2階には講義室や教員室などを配置し、既存の研究施設とつなぐ渡り廊下も整備。昨年8月に着工し、今年5月下旬に完成した。

 

竣工記念式典の出席者に公開された水産実験室

竣工記念式典の出席者に公開された水産実験室

 

 建設費は3億4600万円。文部科学省の施設整備費補助金を中心に、県の産学官連携拠点整備費補助金と市の釜石キャンパス環境整備事業補助金なども活用した。

 

 式典で、同大の岩渕明学長は「地域とともに整備したシンボリックな建物。新たな水産業を模索し、未来のある成果を発信していく。水産研究の核施設として地域振興にも貢献したい」とあいさつ。関係者らがテープカットし、完成を祝った。

 

 施設見学後の研究紹介で、水産コース4年の遠藤裕介さん(21)=奥州市出身=は進行中の研究「地域で出た廃棄物(野菜や海藻のくず)を活用したウニの養殖」の概要を報告。水産業の現場で地域と交流しながら課題解決に向けた研究を進める意義を実感し、「将来は海の近くで働きたい。希望は公務員。市職員として釜石のために力を尽くしたい」とアピールした。

 

 水産実験室などは地元漁業者や企業などにも開放。共同研究や調査で活用し、水産業の振興やまちの活性化につなげる。さらに同研究棟の完成に当たり、水産業の維持に向けて沿岸地域の養殖技術と大学の人材育成を継続的にマッチングさせる仕組みづくりも進めていく考えだ。

 

(復興釜石新聞 2019年7月3日発行 第804号より)

 

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