台風18号、釜石にも大雨〜店舗や復興住宅に浸水、「再開したばかりなのに」とため息も
18日朝、出勤する女性は膝まで濁水につかり、目抜き通りを渡った
九州に上陸したあと日本列島を北上した大型の台風18号は18日朝に本県に最接近し、各地で暴風雨となった。釜石市では17日午後から風雨が強まり、盛岡地方気象台によると、降り始めからの雨量は18日午前10時までに225ミリに上った。市は市内全域(1万6824世帯、3万4806人)に避難勧告を出し、12カ所に避難所を設置。避難者は最大で109人を数えた。市防災危機管理課によると、台風による人身被害はなかったが、大町の市街地が冠水し、店舗や復興住宅が浸水。住民からは「復興途上なのにまた台風」と、ため息も漏れた。
冠水した市道を水しぶきを上げて進む車=18日朝、只越町
雨は17日午後6時ごろから強まり、18日午前1時59分までの1時間に66ミリを観測。アメダスの9月の時間雨量では観測史上最多となった。18日午前7時11分には最大瞬間風速22・6メートルを観測した。
甲子川河口部では消防団が水門を調整し警戒=18日朝
避難所には最大で109人が身を寄せる
学校など4カ所の指定避難所には17日午後5時現在、11人が避難した。18日早朝にかけて雨脚が強まる中で徐々に避難者が増え、午前5時現在、9カ所で109人に達した。
双葉小体育館には最大約50人が避難した。17日午後7時に避難し一晩を過ごした源太沢町の八幡文雄さん(77)、妻ミヨ子さん(77)は「去年(台風18号)より雨が強かった。甲子川より裏山の土砂崩れが心配」と不安そうに話した。
50人が避難し、一夜を明かした双葉小体育館=18日朝
大町など中心街の目抜き通り一帯は冠水し、水につかり止まったままになった車も数台あった。国道や市道も各地で冠水、土砂崩れによる通行止めが相次いだ。住吉町、松原町などでも住宅が床上、床下浸水し、晴れ間が広がった午後になっても冠水したままの場所が点在した。
大雨で水につかった住宅や車=18日朝、住吉町
8階建ての大町復興住宅4号では1階のビジネスフロアが15センチほど床上浸水。美容室を経営する阿部イナ子さん(71)は「いす、電気器具関係は大丈夫。床が乾燥するまで3日ぐらいかかりそう。震災で松原町の自宅と店が全壊。ここで3月31日に店を再開したけど、また水の被害なんて」と憤まんいっぱいの表情だった。
大町や只越町では、大町4号など地下部分へ浸水しエレベーターが止まった復興住宅もあった。近くの商店主は「8階のお年寄りは大変だろう」と心配した。7階建ての大町2号では排水後、メーカーの技術者が制御盤や配線を点検。午後7時ごろ再稼働の準備を完了した。
床上浸水の書店は排水と乾燥に懸命の作業=18日夕、大町
大町の「かまいし親富孝通り飲食店会」(36店)では1階の店舗が床上40センチまで浸水。青葉通りの復興飲食店街「かまりば」も浸水被害を受けた。
JR釜石線は路盤に流木や土砂が流入したため18日始発から終日、運転を見合わせた。遠野―釜石間で区間運休するなど上下24本が運休し、約1500人に影響した。花巻駅に向かう上りのSL銀河も運休した。19日も昼前まで同区間の運転を見合わせ、通学、通勤の足が乱れた。
三陸鉄道南リアス線は18日の始発から午前11時ごろまで運休した。県交通の路線バスも道路の冠水、土砂崩れなどでダイヤが混乱した。
東北電力岩手支店によると、県内10市6町で延べ1万2551戸が停電。釜石市片岸町の18戸が18日午後0時51分に停電したが、ほぼ2時間後に復旧した。
(復興釜石新聞 2017年9月20日発行 第623号より)
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