「ブルーカーボン」活用で水産振興 海との関係性見直す 釜石市で勉強会


2022/06/18
釜石新聞NewS #地域 #産業・経済

「ブルーカーボン」に関する勉強会。水産業振興に役立てる方策を考えた

「ブルーカーボン」に関する勉強会。水産業振興に役立てる方策を考えた

  
 脱炭素社会の実現に向けて世界が動き出す中、海域の生態系が吸収・貯留する二酸化炭素(CO2)「ブルーカーボン」が注目されている。森林が取り込むCO2「グリーンカーボン」の海洋版で、四方を海に囲まれた日本でも活用に向けた研究が進む。また近年、CO2削減量を認定した「カーボンオフセット・クレジット」を取引する取り組みが各地で進行。釜石市で10日に開かれた勉強会(岩手大三陸水産研究センターなど主催)ではブルーカーボンの働きやカーボンオフセット制度に着目し、水産業振興への活用策を考えた。
   
 ブルーカーボンは2009年、国連環境計画(UNEP)が提唱した。海は大気からCO2を吸収しており、アマモやコンブといった海草や藻類は海中でCO2を取り込む。吸収した後に地中の枝や葉、根で長期間貯留する機能も。森林から河川を通して海に流れ出たグリーンカーボンを藻場が吸収する働きもあり、CO2削減と気候変動の緩和に役立つとされる。
  
講師はリモート参加。児玉さんはブルーカーボンの働きなどを紹介した

講師はリモート参加。児玉さんはブルーカーボンの働きなどを紹介した

   
 平田の岩大釜石キャンパスで開かれた勉強会はオンライン配信を併用し、講師はリモートで参加した。国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所の研究開発コーディネーター児玉真史さんがブルーカーボンの働きや活用を探る世界の動きを紹介。国内でも▽生態系・地域別藻場のCO2吸収量・貯留量の評価モデル開発▽藻場の維持・拡大技術開発▽海藻養殖技術の高度化―などの研究が進められている。
   
 児玉さんは、海水温上昇による磯焼け、ウニ類や魚類による食害は世界中で生じている現象とした上で、「新しい藻場の維持、形成技術の開発が必須。海藻養殖は気候変動の緩和、適応策として貢献していける。先進国日本の対策技術に期待が寄せられている」と強調した。食用以外で産業として成り立つことが重要で、「海藻由来の製品開発といった工業的活用策を探り新しい産業を生み出す、イノベーションが求められる」と指摘。沿岸域の藻場を増やす必要もあり、「大規模というよりは大胆に考えてほしい」と助言した。
  
信時さんは「横浜ブルーカーボン事業」について解説した

信時さんは「横浜ブルーカーボン事業」について解説した

  
 神戸大産官学連携本部アドバイザリーフェローの信時正人さんは、ブルーカーボンの活用事例として横浜市の取り組みを紹介した。海洋を活用した地球温暖化対策から生み出されたCO2削減量の枠(クレジット)を購入することで、削減したとみなす「カーボンオフセット」という事業で、横浜市では仕組みを利用しトライアスロン大会を開催。地元企業や団体が行うワカメの地産地消活動で生み出されたクレジットを購入することで、大会運営でのエネルギー利用や参加者の会場までの移動で生じるCO2排出量を埋め合わせ(オフセット)した。大会が温暖化対策を間接的に支援するほか、地域振興にも役立っているという。
  
 コンブ養殖による新たな事業が展開され、飲食店などと連携したメニュー提供や加工品開発、「こんぶ湯」など環境への優しさ、SDGsに注目したイベントでブルーカーボンの可能性を探る動きが活発化している。「アプローチの仕方はさまざま。変化を都市づくりにつなげている」と信時さん。「目の前の海との付き合い方を考えていくことが重要。資源、エネルギー、食の関係性を意識し、見直すきっかけの一つがブルーカーボン」と伝えた。
  
講師に質問する参加者。「海の持つ可能性を知ることができた」との声もあった

講師に質問する参加者。「海の持つ可能性を知ることができた」との声もあった

  
 会場参加と合わせて約90人が聴講。ブルーカーボンのメリットと理解促進へのアピール方法、親しみやすい海づくりのポイントなど質問を投げかける時間もあり、関心の高さをうかがわせた。
 
 釜石東部漁業協同組合青年部長を務める両石町の漁師、久保宣利さん(49)は深刻な磯焼けの対策のヒントが見つかることを期待し参加。同漁協では漁場にコンブを投入する磯焼け対策の実証実験を始めたところで、「ブルーカーボン事業とうまく組み合わせると、資源の循環、持続可能な漁業につなげられると可能性を感じた。より学びを深めたい」と刺激を受けていた。

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