教訓伝える石碑 釜石・箱崎白浜地区「語りつなごう」思い刻む
釜石市の箱崎白浜地区に建立された石碑。佐々木委員長(右)と野田市長が除幕した
大地震が来たら一刻も早く高台に―。釜石市の箱崎白浜地区の住民らが東日本大震災の犠牲者を追悼する「津波記念碑」を建立し、8日、落成開眼式を行った。石碑の裏面には住民らの思いを込めた「語りつなごう」との文字を刻み、避難の教訓を後世に発信し続ける。
落成式には地域住民ら関係者約50人が出席した。建立実行委の佐々木英治委員長(82)が経緯を説明し、「震災から10年が経過し、悲惨な状況を後世に語り継ごうと建立。震災で亡くなった方を悼み、地域の復興の象徴として守っていきたい」とあいさつ。野田武則市長と共に記念碑を除幕した。常楽寺(鵜住居町)の藤原育夫住職により開眼供養が行われ、出席者が焼香して手を合わせた。
津波記念碑の落成開眼式で犠牲者を悼み、手を合わせる箱崎白浜地区住民ら
黒御影石の記念碑は高さ1メートル40センチ、幅1メートル。表面に刻まれた「平成の大津波記念碑」の文字は野田市長が揮毫(きごう)し、裏面には「語りつなごう」に続き、震災の発生日時、当時の総世帯数・人口、被災戸数、死者・行方不明者数などが刻まれた。建立場所は震災後、整備された高さ14・5メートルの防潮堤そばにつくられた海を望む広場。
震災の被災状況、「語りつなごう」の文字を刻んだ津波記念碑
白浜町内会(箱崎町1~3地割)で防潮堤建設や防災集団移転事業が終了したことから記念碑建立の声が上がり、今春に実行委を組織。事業費約150万円は現住民と被災して他地区に移転した元住民からの寄付金を主財源とし、地元企業の協力も得て建立にこぎ着けた。
同地区には震災時、134世帯390人が暮らしていたが、津波で84世帯が被災。地区内で40人が犠牲になり、地区外の住民2人も亡くなった。佐々木委員長は被災体験を振り返り、「思い出すと胸がつまる。地震が発生したら一刻も早く高台に避難しなければならない。石碑があることで、後世に残して語り継ぐことができる」と言葉をかみしめた。
復興が進んだ同地区では戸建て復興住宅(9戸)を含め、現在は約90世帯約230人が居住する。同町内会の佐々木孝郎会長(73)は「住民が減り、高齢化も進むが一致団結することが大事。言葉だけでなく形があれば、見て、頑張ろうと思い出す。記念碑がまちづくりの礎となり、希望あふれる地域の証しになるよう、つないでいきたい」と思いを新たにした。
釜石新聞NewS
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