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震災乗り越え群落形成へ 絶滅危惧植物「ミズアオイ」釜石・片岸町で2年目の開花

片岸公園内の沼地で花を咲かせる「ミズアオイ」

片岸公園内の沼地で花を咲かせる「ミズアオイ」

 
 東日本大震災前、釜石市片岸町の水田地帯に自生していた絶滅危惧植物「ミズアオイ」。津波による被災でその姿を消していたが、震災から11年が経過した今年、群落復活の兆しを見せ始めている。市が整備した遊水池と公園内の沼地で発芽が見られ、8月下旬からは青紫色の花が開花。訪れる人の目を楽しませる。市民らは自然の再生力に驚きながら、かつての原風景復活に期待を寄せる。
 
 ミズアオイは水田地帯や沼地に生える1年草の植物。古くから全国で見られたが、除草剤の使用や水路整備などの成育環境の変化で数が減り、国の準絶滅危惧種、本県レッドデータブックAランク(絶滅の危機にひんしている)に指定される。
 
背丈20~40センチの柔らかい茎の先端に複数の花をつける

背丈20~40センチの柔らかい茎の先端に複数の花をつける

 
青紫色の花被片は6枚。黄色の雄しべとのコントラストが美しい

青紫色の花被片は6枚。黄色の雄しべとのコントラストが美しい

 
 片岸町では約50年前、防潮堤内側の水田地帯にミズアオイの大群落があったが、年々その数は減少。2000年代には所々で見られる程度になっていた。07年、水路改修で生息域を追われる水生生物のために、市内の環境保護団体「かまいし環境ネットワーク」が休耕田を利用してビオトープ(生物生息空間)を整備。土を掘り起こしたことで眠っていたミズアオイの種が芽生え始めた。“水田雑草”とも言われるミズアオイは、田おこしのような土壌のかき回しが発芽条件の一つとされる。
 
 10年には同所で群落が確認できるまでになっていたが、翌11年の震災津波で一帯は壊滅的な被害を受けた。同ネットワークは12年、ミズアオイの復活プロジェクトを始動。専門家らの助言で、かつて群落が確認された場所を重機で掘り、津波で堆積した砂や泥の下にある田んぼの土を採取。栗林町に移し発芽実験を行ったところ、土中に残っていた種からの発芽に成功した。後に鵜住居町田郷の休耕田への移植、漁業用水槽での育成によって命をつないだ片岸のミズアオイは、昨年完成した「片岸公園」の沼地に土ごと返された。
 
震災復興で新設された防潮堤の内側にある「片岸公園」。水辺には多様な植物が生える

震災復興で新設された防潮堤の内側にある「片岸公園」。水辺には多様な植物が生える

 
10年ぶりに古里・片岸に戻り、群落を見せ始めたミズアオイ

10年ぶりに古里・片岸に戻り、群落を見せ始めたミズアオイ

 
 一方で、同じく昨年完成した遊水池では、整備で土が掘り起こされたことで土中に眠っていたとみられる種が自然発芽。片岸公園、遊水池ともに昨年、今年と2年連続で開花が確認された。
 
 3日、現地を訪れた盛岡市の松森猛さん(72)は「自然の回復力は素晴らしい。加えて(保護のため)手を入れてくれた人たちがいたのはありがたいこと」と感心。50年ほど前、仕事の関係で片岸町に暮らしたことがあるが、「その時は全然分からなかった。ミズアオイという植物自体も今回初めて知った。花もきれい」と新たな発見を喜んだ。
 
室浜に向かう高台道路下付近に整備された遊水池

室浜に向かう高台道路下付近に整備された遊水池

 
10年の眠りから覚め、発芽・開花した遊水池のミズアオイ

10年の眠りから覚め、発芽・開花した遊水池のミズアオイ

 
遊水池で自然発芽したミズアオイを愛でる「かまいし環境ネットワーク」の加藤直子代表

遊水池で自然発芽したミズアオイを愛でる「かまいし環境ネットワーク」の加藤直子代表

 
 保護活動に取り組んできた同ネットワークの加藤直子代表(75)は「すごい生命力」とミズアオイが持つ強さに驚嘆。長年、一帯の自然環境を注視してきた経験から「水があり、植物、昆虫、野鳥と豊富な生物が共存する環境があるからこそ、ミズアオイも育つことができるのではないか。その環境を整えてあげることが大事。また眠りに入る可能性もあるが、しばらくは自然のまま見守りたい」と話した。花はあと1週間ぐらいは楽しめそうだ。
 
3日は、前日のニュース番組での紹介もあり、見学者が続々と訪れた=3日、片岸町・遊水池

3日は、前日のニュース番組での紹介もあり、見学者が続々と訪れた=3日、片岸町・遊水池

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師走恒例「かまいしの第九」へ再始動 3年ぶり開催、合唱メンバー「熱い歌声を」

年末の演奏会へ向けて合唱練習を始めた「かまいし第九の会」

年末の演奏会へ向けて合唱練習を始めた「かまいし第九の会」

  
 師走の釜石市を彩る響き、再び-。市民らがベートーベンの交響曲第9番(第九)を歌う「かまいしの第九」が12月11日、大町の市民ホールTETTOで3年ぶりに催される。新型コロナウイルス感染症の影響で中止が続いていたが、再び歴史を刻むべく、23日から「かまいし第九」実行委員会による合唱練習がスタート。合唱メンバーらは、一人でも多くの人に「熱い歌声」を届けようと練習に力を入れる。
   
 7月23日、小佐野コミュニティ会館(小佐野町)で「かまいし第九の会」の発会式があり、約30人が参加。実行委の川向修一会長(70)は「コロナの第7波が急拡大する中、荒波に向かって船をこぎ出す形となった。収束を願いつつ、とにかくスタートし、演奏会ができれば成功だと思う。12月に向かって頑張りましょう」と呼び掛けた。
  
小原さん(左)の指導で、マスクのまま練習するメンバー 

小原さん(左)の指導で、マスクのまま練習するメンバー

   
 式後、早速練習を開始。合唱指導を担当する小原一穂さんのリードで、第九の中でも最もよく知られた「歓喜の歌」などに挑んだ。久方ぶりの練習だが、思った以上に声が出て、「皆さん、待っていたかのよう」と小原さん。再開と再会を喜ぶメンバーらに「集まった人で歌声、思いを合わせるのが合唱の最大の楽しみ。役割分担しながら自分たちの第九を表現して」などと助言した。
  
 今回は、県内在住で第九を歌った経験がある人を中心に参加を呼び掛けた。野田町の石田昌玄さん(48)は15回目の参加。「2年のブランクが不安だったが、歌声を聴いたら、何十年もやってきた先輩たちの貯金があると感じた。音楽は体、心の中に残っている。コツコツと日々の練習を大事にし、みんなと一つのものを作り上げる楽しみを分かち合いたい」と熱を込める。知的な雰囲気に憧れて初参加した人も。平田の坂本和子さん(81)は「歌声がすてき。大変そうだけど、一員になれるよう挑戦したい。悔いのない人生にするために」と前向きだ。
  
練習の合間には笑顔も。みんなで歌う喜びを演奏に乗せる

練習の合間には笑顔も。みんなで歌う喜びを演奏に乗せる

   
 第九の合唱練習は主に土曜日の午後3時半~5時半、同館を使用する。合唱の定員は80人とし、8月6日まで参加申し込みを受け付ける。申し込み、問い合わせは事務局(電話090・6780・0434/メールkamaishinodaiku@yahoo.co.jp)へ。
   
 かまいしの第九は1978年に始まり、東日本大震災のあった2011年も休まず公演。19年まで42回の歴史を刻んできたが、コロナ禍が続き2年間は中止を余儀なくされた。43回目となる今年の演奏会は釜石市民ホールで、12月11日午後1時半の開演を予定する。