教訓つなぐ力を釜石から〜気仙沼向洋高語り部クラブ、鵜住居・未来館で学習


2020/12/18
復興釜石新聞アーカイブ #地域

未来館の菊池のどかさん(左)から震災の話を聞く向洋高生

未来館の菊池のどかさん(左)から震災の話を聞く向洋高生

 

 宮城県気仙沼向洋高(荒木順校長、生徒332人)の生徒有志による向洋語り部クラブ「KSC」(34人)は6日、釜石市鵜住居町の震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」を訪問。東日本大震災の津波で気仙沼市同様、甚大な被害を受けた釜石市の被災状況や防災への取り組みを学び、今後の自分たちの活動への糧とした。

 

 KSC(Koyo Story tellerClub)は、震災の経験を語り継ぐ活動をしたいと生徒側から申し出て、今年6月に発足。津波で被災した同校旧校舎を保存し、開設された「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」で、8月から語り部活動を行っている。

 

 今回は防災リーダー育成のための視察として、生徒19人が岩手県の沿岸被災地を訪問。釜石市の同館では、語り部ガイドの菊池のどかさん(25)から説明を受け館内を見学した。菊池さんは釜石東中3年時に震災に遭い、隣接する鵜住居小児童らと津波から逃れた経験を持つ。生徒らは自らの体験を交えた話に熱心に聞き入り、メモを取るなどして知識を蓄えた。

 

 質疑応答で菊池さんは「語り部は防災の手段の一つ。話を聞いた人たちが防災を実践してくれるのが一番の願い。伝えることは精神的に大変さを伴うが、自分の心と体を大事にしてやってほしい」とアドバイス。生徒らは語り部の〝先輩〟の言葉を心に刻み、今後の活動へ意欲を高めた。

 

 同館隣の祈りのパークも見学。市内の犠牲者の芳名板に被害の大きさを実感し、防災市民憲章に掲げる4つの言葉「備える、逃げる、戻らない、語り継ぐ」に込められた意味を学んだ。

 

 KSCリーダーの熊谷樹君(3年)は、小学2年時に震災を経験。津波で自宅を失った。「他地域の出来事を知ることも必要。参考にしながら、当時の人たちの思い、避難行動を自分の言葉で伝えられたら。地元にいる限りは語り部を続けたい」と思いを新たにした。

 

 只野愛実さん(1年)は「地域のためにできることをしたい」と同活動に参加。津波を経験していない人に恐ろしさを伝える難しさを感じている。「当時2歳だった弟も震災の記憶がない。風化させないために自分も学びを深め、しっかり伝えていかなければ」と使命感を燃やす。

 

 同校は震災の津波で4階まで浸水。当時、学校にいた生徒約180人は高台の階上中まで避難し命をつないだ。震災後は仮設校舎で学び、2018年8月、旧校舎から約2キロ離れた内陸に建設された新校舎に移った。これを機に防災教育を本格化。多様な訓練、阪神淡路大震災の被災地訪問などを重ねる中で、今回の語り部クラブ設立に至った。

 

 荒木校長は「生徒の語り部活動は地域からも期待されている。震災経験者はいつかいなくなってしまう。生の声をリレーのようにつなぐために、記憶のある今の高校生世代がその礎を担ってくれたら」と願う。

 

 KSCは週末を利用し月に2、3回程度、語り部を行う。担当場所を分担し、生徒の都合のいい時間でできるようローテーションを組んで活動している。

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