さらなる交流促進へ釜石視察、震災の教訓 絆を実感〜「復興ありがとうホストタウン」縁結ぶ


2020/02/27
復興釜石新聞アーカイブ #地域

いのちをつなぐ未来館で、震災時の話を聞く議員ら

いのちをつなぐ未来館で、震災時の話を聞く議員ら

 

 オーストラリアの連邦・州議会議員3人は16日、日豪若手政治家交流プログラムの一環で釜石市を視察。東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた鵜住居町などで、同市の被災状況や復興の現状を学んだ。今年の東京五輪・パラリンピックで、同国の「復興ありがとうホストタウン」になっている縁で釜石訪問が実現した。

 

 連邦下院議員ニコル・フリントさん(41)、ニューサウスウェールズ州議会上院議員タラ・モリアーティさん(42)、南オーストラリア州議会下院議員ジョー・ソックアーチさん(37)、日豪の随行者計7人が来釜。始めに市役所を訪れ、野田武則市長らと懇談した。

 

 野田市長は震災後の支援に感謝し、被災から復興への歩みを紹介。釜石湾や鵜住居町の空撮写真を指しながら、津波がどのように襲ったか、湾口防波堤や防潮堤の復旧、土地のかさ上げなどについて説明した。大規模森林火災の被害が深刻な同国に対し見舞いの気持ちも伝え、市内で募金活動を展開していることなど支援の意思を示した。

 

市長室では野田市長自ら写真を示し、被災状況や復興について説明

市長室では野田市長自ら写真を示し、被災状況や復興について説明

 

 議員からは「被災後、まちに残ってもらうための取り組みは」、「被災した子どもたちの心の問題(トラウマ)への対応は」、「復興事業の指揮を執るのは」―といった質問が出され、市長の話に熱心に聞き入った。

 

 両市国のつながりも話題に上った。同市は中学生の派遣事業を実施。同国はラグビーが盛んで、自国出身のスコット・ファーディー選手が釜石シーウェイブス(SW)RFCで活躍したことを聞くと、「より一層の交流をうれしく思う」と喜んだ。

 

 野田市長は1月末で市国際交流員を退任したエミリー・ハラムズさんが同国出身であることも挙げ、「オーストラリアは世界の中でも一番身近で親近感のある国。(五輪のある)今年はさらなる交流促進を」と期待した。

 

 この後、ラグビーワールドカップ(W杯)会場となった釜石鵜住居復興スタジアムを見学。津波で被災した小・中学校跡地への立地ストーリー、座席やラウンジなどへの尾崎半島林野火災被災木の活用、維持費削減などにつながるハイブリッド天然芝の導入―といった特徴を学んだ。台風の影響でW杯試合が中止となったナミビア対カナダ戦の今秋実現に向け取り組んでいることも紹介された。

 

 鵜住居駅前の釜石祈りのパークでは震災犠牲者に献花。防災市民憲章の意味を学び、いのちをつなぐ未来館で、震災時の対応や教訓にさらなる理解を深めた。

 

 一連の視察を通し、フリント議員は「復興の力強さや柔軟さ、住民の絆を実感した。釜石の教訓や復興の様子を自国に持ち帰り、『必ず立ち上がることができる』ということを、声を大にして伝えたい。これからも国を超えて支えていける関係を築いていけたら」と願い、自国ラグビーチームの釜石訪問の夢も描いた。

 

 同プログラムは1991年の日豪閣僚委員会の合意に基づき実施。29回目の今回は15~21日までの日程でオーストラリアの議員らが来日。陸前高田市、宮城県南三陸町でも震災関連の視察を実施後、国会視察や日本の議員との意見交換などを行った。

 

(復興釜石新聞 2020年2月22日発行 第869号より)

 

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