民謡で古里に恩返し、津波で両親犠牲の佐野よりこさん〜震災復興支援チャリティーショー、12月2日釜石で


2018/11/28
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

古里への感謝を込めて民謡ショーを企画する佐野よりこさん

古里への感謝を込めて民謡ショーを企画する佐野よりこさん

 

 釜石市鵜住居町出身の民謡歌手、佐野よりこさん(48)=盛岡市在住=は20日、小佐野町の特別養護老人ホームアミーガはまゆり(久喜真施設長、長期利用90人、短期利用10人、デイサービス利用25人)を慰問し、歌や踊りで高齢者らを癒やした。東日本大震災で両親を亡くした佐野さんは、ショックで声を出せない時期もあったというが、地元の声に背中を押されて活動を再開。「恩返しをしたい」と思いを込めて歌声を届けている。そんな佐野さんが企画する震災復興支援チャリティーショー「笑福! 民謡(うた)と踊りの祭典」(一般社団法人清流会主催)が12月2日、大町の市民ホールTETTOで開かれる。

 

 「一足先に歌っこ届けにきたよ」。慰問では、「南部俵積み唄」「涙そうそう」など民謡、歌謡曲を織り交ぜて披露。三味線の弾き語りでは「釜石浜唄」を、しっとりと聴かせた。

 

 佐野さんは3歳で民謡を習い始めると、めきめきと実力を付け、中学時代には釜石の民謡大会で史上最年少優勝。「南部牛追唄」「外山節」など数々の全国大会で日本一となるなど活躍している。一昨年には第56回郷土民謡民舞全国大会で最高賞の民謡グランプリ大賞に輝き、内閣総理大臣賞を受けている。

 

 震災の津波で実家が流され、父祐三さん(当時73)、母マサエさん(同74)も奪われた。失った衝撃で歌えない日が続いた。そんな中、聞こえてきたのは、地元の被災者の「よりこちゃんの歌が聴きたい」という声。古里の声に押され活動を再開してからは、県内の民謡仲間らと被災地を回る活動にも参加している。

 

 「育て、かわいがってもらった古里に恩返ししたい」と考えていた佐野さん。待望の市民ホールが完成し、「私には民謡しかない。古里の舞台で、歌で思いを伝えたい」と、自分なりの恩返しの場となるショーを企画した。

 

 ショーには佐野さんのほか、民謡の吉田やす子さん、北條真由美さん、舞踊の井上ひとみさん、吉田成美さんら県内の若手メンバーが出演。お笑いパフォーマーの石黒サンペイさんによるステージもある。菊池信夫さん、山崎隆男さん、漆原栄美子さん、細川艶柳華さんが特別出演。「桜舞太鼓」「おおつち一心会」も協力する。

 

 午後0時半開演。全自由席で大人1500円(当日2千円)、高校生以下800円(同1千円)。収益の一部を釜石の復興支援金として寄付する。

 

 慰問で、利用者らは曲が始まると自然と口ずさみ、手拍子を合わせる。佐野さんは「民謡は生活に根ざしたもの。自然と体が反応する」と歌の力を実感。恩返しはもちろん、「地域住民の集いの場となり、世代間交流につながれば。師走のTETTOで笑って楽しんで、笑顔で新しい年を迎えてほしい」と願っている。

 

 問い合わせは佐野よりこ民謡チャリティーショー事務局(電話019・651・8886)へ。

 

(復興釜石新聞 2018年11月24日発行 第743号より)

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