競わずとも津波避難行動を確認 コロナ禍の「韋駄天競走」形を変えて実施


2022/02/10
釜石新聞NewS #防災・安全

津波時の避難経路を確認しながら急坂を上る家族

津波時の避難経路を確認しながら急坂を上る家族

 

 津波発生時の迅速な高台避難を啓発する釜石市の「新春韋駄天(いだてん)競走」。東日本大震災の教訓をつなぐ節分行事として、2014年から開催されてきたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大を考慮し、例年のレース形式を取りやめ、任意参加による避難訓練として実施した。震災から間もなく11年―。記憶の風化が進み、災害への危機意識の低下が懸念される中、参加者は防災への心構えをあらためて胸に刻んだ。

 

 同行事は大只越町の日蓮宗仙寿院(芝﨑惠應住職)が主催。只越町の津波浸水区域から高台の同寺まで286メートル、高低差約26メートルのコースを駆け上がる。年代などで分けた6部門で開催し、各部の1位には「福男」「福女」「福少年」「福親子」の称号が与えられる。

 

仙寿院境内までの道のりは走っても歩いてもOK。各自のペースで駆け上がる

仙寿院境内までの道のりは走っても歩いてもOK。各自のペースで駆け上がる

 

 9回目の今年も6日の開催に向け準備を進めてきたが、新型コロナ感染拡大に伴う県独自の緊急事態宣言が出され、運営スタッフの確保も難しくなったことから、例年の形式を断念。コースをたどって津波避難場所の同寺まで上がってきた人たちに記念品を手渡す形をとった。米(3合)、同寺のお守りストラップなどに加え、避難啓発のメッセージを記した参加証も贈った。

 

主催者から参加証と記念品を贈呈。文書で津波避難の意識啓発を呼び掛けた

主催者から参加証と記念品を贈呈。文書で津波避難の意識啓発を呼び掛けた

 

願いを書き入れた人形を坂の絵に貼り付ける親子

願いを書き入れた人形を坂の絵に貼り付ける親子

 

 人形(ひとがた)に「コロナ退散」など各自の願いを書き込み、ボードに貼ってもらう試みも。毎年実施してきた海に向かっての黙とうも呼び掛けた。趣旨に賛同し、境内に足を運んだのは46人(うち30人が当初の競走エントリー者)。親子での参加が目立ち、震災後に生まれた子どもたちに教訓を伝えようとする姿勢が見られた。

 

 大只越町の菅原丙午さん(46)は長男一慧君(4)誕生後、親子参加を続ける。「まだ分からないだろうが、今のうちから(避難を)経験させたい」。自宅は津波被害を免れたが、高台から見る住居が減ったまちの光景に複雑な思いをのぞかせる。「コロナに気を取られ、震災のことも忘れがちになっているが、こういう機会を捉え、子どもに繰り返し教えていければ」と願う。

 

 陸前高田市の金野円香さん(34)は職場が釜石という縁で、長女凛愛(るな)さん(11)、長男優真君(10)を連れて初めて参加。凛愛さんは高台避難の大変さを実感し、「1人だとちょっと怖いけど、いざという時は今日の体験を思い出して避難したい」。災害時の避難場所は家族で確認し、家の中の普段から目につく所に掲示。円香さんは「とにかく高い所に逃げることを覚えていてほしい。『防災グッズも準備しないとね』と話しているところ」と家族間で意識の共有を図る。

 

親子3世代で参加する姿も。震災の教訓を確実につなぐ

親子3世代で参加する姿も。震災の教訓を確実につなぐ

 

昨年生まれたばかりの赤ちゃんもお母さんに抱かれ避難体験!この日は1位のたすきをかけての記念撮影も楽しんだ

昨年生まれたばかりの赤ちゃんもお母さんに抱かれ避難体験!この日は1位のたすきをかけての記念撮影も楽しんだ

 

 行事を発案し、運営母体として活動する「釜石応援団ARAMAGI Heart(あらまぎハート)」の下村達志さん(46)は「本来の目的は、競走ではなく避難意識を促すこと。コロナ禍でもできることを考えた。目的は少なからず果たせたと思う」。来年以降の通常開催実現を祈りつつ、「この1年の間にも災害があるかもしれない。その時にはしっかりと避難できるよう意識だけは持ち続けてほしい」と呼び掛ける。

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