岩手ビッグブルズ(Bリーグ3部)、釜石でホーム2連勝 被災地を勇気づける〜特別ユニホームで躍動、釜石出身アーティスト 小林覚さんデザイン

岩手ビッグブルズ(Bリーグ3部)、釜石でホーム2連勝 被災地を勇気づける〜特別ユニホームで躍動、釜石出身アーティスト 小林覚さんデザイン

第4Q終盤、連続得点で勢いづく岩手ビッグブルズ(紺)=13日

第4Q終盤、連続得点で勢いづく岩手ビッグブルズ(紺)=13日

 

 日本プロバスケットボール男子Bリーグ3部(B3)の岩手ビッグブルズは13、14の両日、釜石市鵜住居町の市民体育館で開かれた第5節のホーム戦で、岐阜スゥープスと対戦。2試合とも勝利し、通算9勝1敗で単独首位をキープした。東日本大震災復興祈念試合と位置づけられた本戦。「絶対負けられない」とチーム一丸となってもぎとった勝利は、地元の観客らに大きな感動を与え、震災から間もなく10年となる被災地を活気づけた。

 

 ブルズの釜石での試合は、2019年12月の同体育館こけら落とし以来2回目。13日午後6時からの試合には、452人が来場した。

  

 第1クオーター(Q)を21―12、上々の立ち上がりを見せたブルズだったが、その後、岐阜にじわじわと追い上げられ苦しい展開に。第3Q終了時点で60―57とリードを奪われた。最終第4Qも一進一退の攻防。地元応援団の力強い後押しを受け、勝利への執念を燃やすブルスは終盤の連続得点で必死の追い上げ。試合終了1分20秒前に79―79の同点に持ち込んだ。ドラマはまだまだ続く。残り9・9秒。岐阜のファウルでフリースローを得たブルズは、奥州市出身、在籍10年目の千葉慎也選手が2本とも確実に決め、逆転に成功。激しいディフェンスで最後まで守り切り、81―79で接戦を制した。

 

試合終了間際、ブルズの逆転に沸きたつブースターら

試合終了間際、ブルズの逆転に沸きたつブースターら

 

 大槌町の会社員田中吉子さん(56)は「最後まで諦めない姿に感動した。最後の2点はみんなの気持ちが伝わったのかな。震災10年にあたり、(意義ある)大きなプレゼントになった」とチームをたたえた。

 

 釜石市の双葉ミニバス少年団に所属する川村惺雅君(双葉小6年)は「接戦試合でめっちゃ面白かった。ブルズのプレーは自分たちのお手本。ドリブルの強さとかまねできるようになりたい」と憧れのまなざし。この日は前座のU―12の試合に釜石選抜メンバーの一人として出場した。

  

 勝敗を左右するフリースローを決めた千葉選手(33)は、現選手の中で唯一の岩手県出身者。「この場面で自分かと運命的なものを感じた。この地の力も宿ったのかな。(ボールがゴールに)吸い込まれていった」。我慢強くプレーし、メンバー全員で被災地に届けられた価値ある勝利に喜びをにじませた。千葉選手はこの日、MVP賞も受賞した。

 

 14日は109―57、今シーズン最多得点で快勝。連勝を6に伸ばした。第6、7節は3位につける東京エクセレンスとの4連戦に挑む。

 

小林覚さんによる特別ユニホームで躍動

 

復興祈念ユニホームについて紹介する小林覚さん(右)と松田文登副社長

復興祈念ユニホームについて紹介する小林覚さん(右)と松田文登副社長

 

 今回の復興祈念試合で岩手ビッグブルズの選手を鼓舞したのが、釜石市出身のアーティスト小林覚さん(31)のアート作品をデザインした特別ユニホームの着用。被災地復興の力となるべく活動してきたクラブが、震災10年にあたり作成した。4月に宮古市で開催されるベルテックス静岡戦でも身に着ける。

 

 釜石の試合で着用したのは、2色(紺・白)のうち紺色のユニホーム。一部に小林さんが描いたアートがあしらわれる。原画は小林さんが大好きなビリー・ジョエルの名曲「マイ・ライフ」(1978年)をイメージした作品。歌詞を自分の耳に聞こえたとおりに文字化し、小林さんならではの表現でつづっている。同曲は自分らしい生き方や心の豊かさが歌われている。

 

ユニホームにデザインされた小林さんの作品

ユニホームにデザインされた小林さんの作品

 

 復興祈念ユニホームの作成は、知的障害のあるアーティストの作品をさまざまな形で世に送り出している福祉企画会社、ヘラルボニー(松田崇弥社長、盛岡市)との共同企画。復興にかけるブルズの強い思いに共感した同社がデザインを担当した。

 

 13日は小林さんと同社の松田文登副社長が試合を観戦。松田副社長は「障害のあるアーティストの作品をプロスポーツチームが取り入れるのは全国初。障害のイメージを変えていく一歩を岩手から踏み出せたのは大きい」と強調。

 

 今回のタイアップを提案した伊藤良太主将(28)は「おしゃれでかっこいいユニホーム」と気持ちを高ぶらせ、「スポーツとのコラボで発信できる社会的メッセージは多い。この実現が力になり、次の10年につながっていけば」と願った。

 

 被災地岩手でバスケットボールをする意義を選手全員で共有し、体現するブルズ。13日は試合前に岐阜の選手と釜石祈りのパークを訪れ献花、震災犠牲者の冥福を祈った。伊藤主将は「自分たちがバスケをする意味をあらためて考えさせられたと思う。つらい思いをしている方々に元気や明日への活力を与えられるようプレーしていきたい」と誓った。

新たな製品づくりでは菊地菜月さん(前列中)を中心に女性たちが活躍

食べる喜び「ムスビ」で発信、小島製菓〜ふんわりビスケット、オンラインで販売開始

新たな製品づくりでは菊地菜月さん(前列中)を中心に女性たちが活躍

新たな製品づくりでは菊地菜月さん(前列中)を中心に女性たちが活躍

 

 釜石市上中島町の菓子製造販売・卸業「小島製菓」(菊地広隆社長)は、子育て世代や女性目線を生かした新事業に取り組んでいる。東日本大震災、新型コロナウイルス感染症などの影響で打撃を受ける土産産業だが、「逆境に負けない」と挑む試み。立ち上げた菓子ブランド「MUSUBit(ムスビ)」を紹介する開発商品のオンライン販売を15日から始めた。

 

 ブランド名を冠に売り出したのは、現代の子どもが抱える「野菜嫌い」「偏食・栄養不足」の問題を解決するための菓子。野菜や果物の成分をおいしく採れる、ふんわり食感の一口サイズのビスケットだ。

  

 全粒粉や大豆粉を用いたベース生地に野菜パウダーを混ぜ込み、中には果物などのソースが入っている。生地・野菜パウダー・ソースの組み合わせは、全部で32通り用意した。

 

野菜や果物を使ったビスケット「ムスビ」

野菜や果物を使ったビスケット「ムスビ」

 

 保存料・香料・着色料などは使わず、国産素材を積極的に使用している。野菜や果物の風味を感じられるようにし、子どもが苦手な食材に慣れるための第一歩としても手にとってもらえるよう配慮。ここがこだわった点で、半年間、試行錯誤した。栄養面では管理栄養士による監修を受けていて、不足しがちな栄養素を補えるのもポイントだ。

 

 この新事業は、同社副社長の菊地菜月さん(32)が中心となって進める。自身の家庭を含め、「子どもがせっかく作ったご飯を食べてくれない」「お菓子なら食べてくれるが、栄養面が不安」などの食に関する課題を抱えている家庭が多いという状況に直面。親が子どもの健康や栄養を考える気持ちと、食べることに楽しみを見いだせない子ども両方の現状を救いたいとの思いが開発に結び付いた。

 

 創業75年を超える老舗和菓子屋の同社も震災で製造環境や経済的に被害を受けた。地域や観光客の力で事業を続けるが、コロナ禍で人の往来が激減。一昨年のラグビーワールドカップ開催で軌道に乗り始めた土産産業に影を落としている。

  

 そこで着目したのが全国展開できるオンライン販売。ムスビは1袋15個入りで、4袋をセットにした箱入りで売り出す。送料込み1850円で、別途消費税がかかる。▽おまかせ(発送は注文から3日以内)▽自由カスタム(同10日以内)―の2種から選択できる。日持ちは2週間とのことだ。

 

 ブランド名に込めた思いは「子どもと親をハッピーで〝結ぶ〟存在に」。平田にある工場で開発、製造、運営に携わる多くは女性たちだ。「働く女性を後押しする活動をしたい。女性の雇用、可能性を広げていきたい」と菜月さん。さらに栄養価を上げたもの、OLや女性アスリートなどターゲットを絞った商品開発、地域を元気づける挑戦を続ける構えだ。

 

 注文は専用販売サイト(https://musubit.com)へ。

笑いで元気に!三遊亭楽大の「正座の限界60分落語会」

笑いで元気に!三遊亭楽大の「正座の限界60分落語会」リモート開催

笑いで元気に!三遊亭楽大の「正座の限界60分落語会」

 

落語による心の復興事業 笑いで元気に!三遊亭楽大の「正座の限界60分落語会」

新型コロナウィルスの感染拡大により、三遊亭楽大さんはリモート出演となります。

 
近隣の住民の方々や災害公営住宅の住民の方々のコミュニティの形成の一助となることを目的に落語会を開催致します。岩手県沿岸で落語を生で楽しむことができる貴重な機会になるかと思います。是非この機会に皆様お誘いあわせの上、ご来場下さい。

 

感染症拡大防止対策ご協力について
●新型コロナウィルス対策として、入場する際には皆様にマスクの着用、手指の消毒、体温の計測等へのご協力をお願い致します。
●入場に関しまして体調の悪い方及び体温が37.5度以上の方の入場をお断り致します。

 

日時

2月24日(水)13時30分〜 平田公民館 ※リモート開催
2月25日(木)13時30分〜 中妻公民館 ※リモート開催
2月26日(金)10時30分〜 唐丹公民館 ※リモート開催

入場料

無料

主催・お問い合わせ

釜石まちづくり株式会社
TEL 0193-22-3607

 

※落語による心の復興事業は「令和2年度岩手県被災者の参画による心の復興事業の補助を受けて実施しています。

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

釜石市芸術文化協会50周年座談会、記念誌「芸苑」3月に配布へ〜歩みや提言を未来に生かす、文化の担い手 悩みは高齢化

釜石市芸術文化協会50周年座談会、記念誌「芸苑」3月に配布へ〜歩みや提言を未来に生かす、文化の担い手 悩みは高齢化

さまざまな思い出話や提言が出された芸文協50周年記念座談会

さまざまな思い出話や提言が出された芸文協50周年記念座談会

 

 釜石市芸術文化協会(河東眞澄会長、32団体)は6日、協会結成50周年記念史誌「芸苑」の発行に向け、結成当初を知る会員らから話を聞く座談会を開いた。協会の歴史や未来への提言を記録し、後世の活動に生かす目的で開催。会の模様を収録した史誌は3月に完成する予定で、関係者に配布される。

 

 市民ホールTETTOで開かれた座談会には洋画家の菊池政時さん(85)、釜石写光クラブ会長の遠藤顕一さん(78)、釜石郵趣会会長の千坂誠久さん(77)、美術集団サムディ45会員の鈴木睦さん(78)が出席。河東会長と浅利金一事務局長が話を聞いた。

  

 同協会が結成されたのは1970(昭和45)年7月。協会主催の市民芸術文化祭も同年から始まり、市内の文化活動団体が一堂に会する発表の場として今に受け継がれる。芸文祭は78(昭53)年に釜石市民文化会館が新築落成するまでは、旧映画館(錦館)の施設を活用し67(昭42)年に開設されていた市民会館などで開催。約60団体が活動した時代には、周辺の公民館も借りて会場を分散して開催していたという。

 

 釜石の芸術活動の先駆けとなる「サムディ45」を69(昭44)年に立ち上げた菊池さんは、展示ホールを備えた会館の必要性を市に訴えた一人。「市民の発表の場として多目的に使える造りを市長に直訴した。当時は釜石の芸術文化発展への礎が築かれた時期」と回顧。

 

 写真愛好家が集う写光クラブを率いる遠藤さんは、70年の活動開始からの歩みを紹介。会員には県の芸術祭や全国展で入賞する人もいて、「活動の成果を市民に見てもらえる芸文祭は会員の励みになる」と市内での発表機会に感謝。油絵の創作活動を続ける鈴木さんは所属するサムディ45について「切り絵やちぎり絵、デザインなどさまざまな分野で活躍する人たちが会員になり、面白さを増している」と釜石の芸術活動の奥深さを実感する。

 

 切手収集を趣味とする人たちが集まる郵趣会は68(昭43)年に結成。同協会の活動に発足当初から携わる千坂さんは「過去には釜石製鉄所の真道会と一緒に文化祭を開催したこともある」と地域の芸術文化活動の歴史をひもとく。

  

 現在、協会加盟団体の多くが抱える悩みは会員の高齢化。座談会出席者からは「今の若い人たちは組織に入っての活動を好まない傾向がある」との指摘もあり、今後の協会活動存続への懸念の声が上がる。

 

 会では、これまで培ってきた釜石の芸術文化の灯を絶やさないための方策として「市内の学校に働きかけ、子どもたちの作品を芸文祭に出品してもらっては」「協会が個々で活動する人たちの相談窓口になれれば」「心豊かな人間育成に必要な年齢に合った感性を磨く場を協会として支援できないか」―などの意見が出された。

 

 50周年記念史誌は協会の会員のほか、震災以降、各種支援をしてくれた市外の団体などに配ることにしている。

「津波だ、逃げろ高台へ」コロナに負けず教訓つなぐ〜仙寿院で韋駄天競争、震災から10年 風化防ぐ

「津波だ、逃げろ高台へ」コロナに負けず教訓つなぐ〜仙寿院で韋駄天競争、震災から10年 風化防ぐ

津波で浸水した只越町から津波避難場所となっている高台の仙寿院を目指し、元気に駆け出す親子

津波で浸水した只越町から津波避難場所となっている高台の仙寿院を目指し、元気に駆け出す親子

 

 津波発生時の迅速な高台避難を啓発する第8回「新春韋駄天(いだてん)競走」が7日、釜石市大只越町の日蓮宗仙寿院(芝﨑恵応住職)周辺で行われた。東日本大震災の教訓をつなぐ2014年からの節分行事。新型コロナウイルス感染拡大下の今年、主催者(同院・釜石仏教会)は開催可否に悩んだが、「どんな時でも災害は起こり得る」との認識のもと、各種感染防止策を講じ実施に踏み切った。震災から間もなく10年―。参加者は自らの命を守る避難行動を体験し、悲劇を繰り返さない意識を高めた。

 

ゴールまであと少し。幼児も父母らとがんばって坂を登る

ゴールまであと少し。幼児も父母らとがんばって坂を登る

 

 参加資格を市内在住(または通勤・通学など)、開催日前2週間に県外滞在歴がないこととし、開催部門を例年の6部門から3部門に縮小。観客にもマスク着用、拍手での応援を呼び掛け。飛沫(ひまつ)拡散防止、3密回避などの対策を徹底した。

  

 1歳から47歳まで57人が参加。15組(31人)が参加した親子の部からスタートし、只越町の消防屯所付近から高台の仙寿院まで286メートル、高低差約26メートルのコースを必死に駆け上がった。小・中学生の部には19人が出場。中学生の硬式野球チーム「釜石ボーイズ」や釜石中陸上部の団体参加も。一般の部には男性7人が参加した。

 

ゴール前でラストスパートを見せる中学生。日ごろからスポーツで鍛えているだけあって余裕の表情⁉

ゴール前でラストスパートを見せる中学生。日ごろからスポーツで鍛えているだけあって余裕の表情⁉

 

 各部門の1位には、芝﨑住職から「福親子」「福少年」「福男」の認定書が授与された。

 

 「福親子」となった箱崎町の小林直哉さん(41)と次男大空(かなた)君(8)は初参加。走るのが好きという大空君は「楽しかった」と一言。10年前の震災で直哉さんは、鵜住居小児童だった長男と一緒に避難し、津波から逃れた。「自分も小学校から津波防災教育を受けて育った。あの時は自然に体が動いた」と振り返る。震災の翌年に生まれた大空君は同小の3年生。「この子たちも今、学校でしっかり教育を受けている。こういう経験はいざという時、必ず生きるはず」と直哉さん。

 

「福親子」「福男」「福少年」(前列左から)に輝いた参加者

「福親子」「福男」「福少年」(前列左から)に輝いた参加者

 

 「福少年」は釜石ボーイズの仲間と継続参加する山田町の田村葵里君(15)=山田中3年=。「震災で自宅が被災し、避難の大切さを身にしみて感じている。〝逃げる〟ことをみんなに広めていけたら」と思いを行動で示す。「福男」は甲子町の伊藤嶺司さん(20)=法政大2年=が初参加で手にした。「災害はいつ起こるか分からない。津波時の高台避難を〝福男〟になった身として後世に伝えていきたい」と意を強くする。

  

 芝﨑住職は「震災後に生まれた子どもたちの参加が増えてきた。教訓を伝えたいという親の意思の表れ。来年もぜひ、参加を」と呼び掛けた。

壁アートの完成を喜ぶ制作者ら。このあと写真左側の壁に設置

外壁彩り にぎわい創出〜釜石大観音仲見世通り、新たなアートスポットに

壁アートの完成を喜ぶ制作者ら。このあと写真左側の壁に設置

壁アートの完成を喜ぶ制作者ら。このあと写真左側の壁に設置

 

 釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りに1月24日、新たなアートスポットが誕生した。市内の建造物の外壁などをパブリックアートで彩る活動を行う市民グループ「ゼロスポット」(小笠原梓代表)が、公募で選ばれた作品を制作。同通りのシェアオフィス「co-bakamaishi marudai(コーバ釜石マルダイ)」入り口の壁に設置した。見る人の心を明るくし、フォトスポットとしても楽しんでもらう狙いで、まちのにぎわい創出の一助とする。

 

 同グループが進める「マチナカラフル」プロジェクトの一環。昨年8月から実施した作品案の募集には県内各地から10点の応募があり、展示やオンラインでの一般投票と審査員審査の結果、釜石市在住の三浦綾さん(39)、佐々木江利さん(41)が共同出品した案が採用された。2人が中心となり、12月から本格的に制作を開始。24日、総仕上げと設置作業が行われた。

  

 作品は縦160センチ、横95センチ。合板材を白ペンキでビンテージ風に塗り、上部に取り付けた流木から人工の草花を吊り下げた。こだわりはリボンで形作った「Love」の文字。1本でつながるリボンの両端をカップルや友人、家族で手にし、写真を撮ってもらう仕様。草花の間からは、ボードに記した「me&you always」の文字も見え隠れする。

 

 三浦さん(宮城県出身)は夫の仕事の関係で2012年に、佐々木さん(神奈川県同)は結婚を機に16年に釜石市へ移住。子育てイベントなどで顔を合わせるうちに仲良くなった〝ママ友〟で、昨年9月、ゼロスポットが開催したアートイベントに足を運び、同企画への応募を決めた。

 

 もともとインテリアやもの作りに興味があり、好みが似ていた2人。大好きな自然をモチーフに三浦さんがイメージを膨らませ、佐々木さんがパソコンで応募用のイメージ画を作成した。制作作業では写真映えを意識しながら、草花の配置を細かく調整。スマートフォンのカメラで何度も確認し、納得のいく作品に仕上げた。

  

 「テーマは〝愛〟ある日常。外から来ている人も多い釜石。いろいろな人が愛情を持ってつながっていければとの思いを込めた」と三浦さん。想像以上の出来栄えに「手伝ってくれた仲間に感謝です。みんなの優しさ、温かさに触れ、これこそ愛だなって」と感激の表情。

 

 佐々木さんは「他の人たちの作品案を見て正直だめかと思ったが、選ばれてびっくり。思いを形にする機会をいただき、実現できたことが何よりうれしい」と喜びを表す。

 

 さわやかな風が吹き抜けるナチュラルガーデンのような雰囲気を醸すオリジナルアート。2人は「幅広い世代に来てもらい、思い出に残る写真を撮ってほしい。SNS時代の人気スポットになれば」と期待。建物のオーナーで、同仲見世の再生に取り組む宮崎達也さん(49)は「女性らしい感覚で、通りも華やかになる。多くの人の目に触れてほしい」と話す。

新刊の2作にサインをしてもらう朗読会の来場者

鎮魂句集「泥天使」出版、釜石ゆかりの俳人 照井翠さん〜震災10年集大成 三部作完結、震災の様相 今も胸に迫る句を朗読

新刊の2作にサインをしてもらう朗読会の来場者

新刊の2作にサインをしてもらう朗読会の来場者

 

 東日本大震災を釜石市で経験し、震災を詠んだ句が注目を集めてきた俳人の照井翠さん(58)=北上市在住=が、このほど震災10年の鎮魂句集「泥天使」を出版した。表現者として震災に向き合い続けた10年の集大成。2012年初版の句集「龍宮」も文庫新装版として同時発売され、19年刊行のエッセー集「釜石の風」と合わせ、照井さんの〝震災三部作〟が完結した。

 

 高校の国語教諭である照井さん(現北上翔南高教諭)は震災時、勤務先の釜石高で被災。避難所となった同校で、自宅や家族を失った生徒、住民らと約1カ月間、避難生活を共にした。

 

 被災直後から移り変わる季節ごと目にした光景や湧き起こる感情を言葉に紡ぎ、震災を俳句で表してきた照井さん。震災句集第2弾となる「泥天使」は全8章の構成で、奇数章に「龍宮」以降の震災詠、偶数章に〝コロナ禍〟の今を含む日常詠、計408句を収めた。

 

震災10年にあたり句集「泥天使」、「龍宮」(文庫新装版)を発刊した照井翠さん

震災10年にあたり句集「泥天使」、「龍宮」(文庫新装版)を発刊した照井翠さん

 

 前作から8年が経過する中で生み出された震災句は「直後の生々しさにフィルターがかかり、ろ過されてよりピュアな部分が出てきた」と説明する。時の流れは、直後の混乱で理解しきれなかったことも「今なら分かる」というように思索を深め、「それが作品の結実につながっていった」と明かす。

 

 「寄するもの容るるが湾よ春の雪」「蜩(ひぐらし)や海ひと粒の涙なる」―津波から数年後に生まれた句。「海を憎むだけだった以前には絶対詠めなかった句。時がたったからこそ本質を捉え、凝縮して表現できたところがある」

 

 震災10年にあたり「詩(俳)人の端くれとして、自分なりに震災に向き合ってきたつもり。今回の句集はその総決算。全てを出し切った」と照井さん。

 

 今後、震災の風化がさらに進むことは確実。自身の句集を「紙の石文(石碑)」と称し、「折りに触れ、忘れかけた時にひもといてもらえば、震災の大変さ、揺れ動く気持ちを感じてもらえるのではないか。多くの人の心に届くといい」と思いを込める。

 

 「泥天使」(税込み1980円)、文庫版「龍宮」(同1100円)、「釜石の風」(同1650円)は、いずれもコールサック社から発売中。

  

 照井翠さんの2作品出版を記念し、1月30日、釜石市大町の市民ホールTETTOで、照井さんによる句集の朗読&サイン会(桑畑書店主催)が開かれた。市民ら約20人が震災句を通して当時に思いをはせ、句に込められた意味を学んだ。

 

 「龍宮」から、震災1年目に詠んだ35句を朗読。池澤夏樹さん、伊集院静さんら著名作家も取り上げた「春の星こんなに人が死んだのか」「逢へるなら魂にでも なりたしよ」―など、印象的な句の解釈を示した。

 

 「泥天使」の震災句からは16句。「三月や何処へも引かぬ黄泉の泥」「抱いて寝る雪舞ふ遺体安置所で」「死が横で 息をしてゐる春の宵」―。多くの犠牲者を出した大津波、大切な人を失った深い悲しみ。17音が伝える震災の様相は、10年たった今も胸に迫る。

 

 「三・一一死者に添ひ伏す泥天使」。句集のタイトルに引用された同句には、犠牲者の救いを願う気持ちが込められる。「亡くなった人たちの最期には、天使のような寄り添ってくれた存在がいたのではないか。先祖の御霊でもいい。優しい言葉をかけてくれて天に召されたなら、少しは癒やされる」と照井さん。

 

 散りゆく桜に犠牲者の御霊を重ねた句も。訪れた人たちは照井さんが生む言葉の力を感じながら、解説に聞き入った。

 

 大平町の紺野きぬえさん(76)は、小佐野公民館で活動する俳句サークル「まゆみの会」の会員。震災後、照井さんから指導を受けている。「照井先生の句は心に響く。解説を聞いて震災当時の様子が目に浮かんだ。災害はこれで終わりではない。後世に語り継ぐ上でも先生の句は大きな意味を持つと思う」と話した。

広報かまいし2021年2月15日号(No.1754)

広報かまいし2021年2月15日号(No.1754)

広報かまいし2021年2月15日号(No.1754)

 

広報かまいし2021年2月15日号(No.1754)

広報かまいし2021年2月15日号(No.1754)

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【P1】
表紙

【P2-3】
釜石市新型コロナワクチン接種推進室
東日本大震災犠牲者追悼式
市営・定住促進住宅入居者の募集

【P4-5】
市民課各種サービスの案内
市・県民税申告の案内

【P6-7】
意見募集

【P8-11】
聖火リレートーチ巡回展示
パソコン無料回収
まちのお知らせ

【P12-13】
まちの話題

【P14-15】
こどもはぐくみ通信
市民のひろば

【P16-17】
保健案内板
保健だより

【P18-19】
復興情報

【P20】
釜石の歴史 よもやま話

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2021020500064/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
ラグビーのまち構想実現に向け、釜石と東京をオンラインでつないで実施された協定締結式

「ラグビーのまち」創造へ〜釜石市、コンサルティング会社と連携協定 復興スタジアム

ラグビーのまち構想実現に向け、釜石と東京をオンラインでつないで実施された協定締結式

ラグビーのまち構想実現に向け、釜石と東京をオンラインでつないで実施された協定締結式

 

 釜石市は1月28日、コンサルティング会社フューチャーセッションズ(東京都渋谷区、有福英幸社長)とスポーツを生かしたまちづくりの実施に関する包括連携協定を結んだ。両者はラグビーワールドカップ(W杯)の会場となった釜石鵜住居復興スタジアムの運営、活用方法を検討する委員会の事務局業務を協働で進めており、連携を強化。「ラグビーのまち釜石」の多様な新価値の創造に挑戦する。

 

 フューチャーセッションは、多様な人をつなぎ共創的な対話や協業で新たな関係性やアイデアを生み出す場。同社は、この手法を用いた企画・運営、共創型の事業開発・組織開発支援などを展開している。釜石市との関わりは2014年からで、最近ではスタジアム運営委の事務局業務をサポートしてきた。

  

 協定締結は、双方が持つ資源を有効に活用した協働による活動を推進し、地域の活性化やラグビーのまちとしての振興を図るのが狙い。▽ラグビーW杯の成果を生かしたまちづくり▽スポーツを基軸とした地域産業の振興▽スポーツによる青少年の健全育成・人材育成―など7項目に取り組む。

 

 締結式は都内の同社と釜石市鈴子町のシープラザ釜石内のラグビーカフェをつなぎ、モニター越しで実施。野田武則市長は「力と知恵を借り、『ラグビーのまち釜石』構想の実現に向け一歩を進めたい」と期待を込めた。

 

 両者は取り組みを効果的に遂行するため、定期的に協議の場を設ける。有福社長は「パートナーとして、新たな価値の創造や地域課題の解決をサポートしたい」と強調した。

「釜石市スマートコミュニティ」新エネルギー財団会長賞〜震災復興貢献を高く評価、新エネ大賞地域共生部門

「釜石市スマートコミュニティ」新エネルギー財団会長賞〜震災復興貢献を高く評価、新エネ大賞地域共生部門

太陽光パネルが設置された上中島復興住宅

太陽光パネルが設置された上中島復興住宅

 

 新エネルギーの普及・啓発で優れた取り組みをたたえる本年度の新エネ大賞の地域共生部門で、釜石市が建設技術研究所(東京都)、釜石瓦斯(鈴子町)と共同で取り組む事業「震災復興に貢献する釜石市スマートコミュニティ」が、新エネルギー財団会長賞に選ばれた。主催する同財団が1月26日に発表した。

 

 同事業は、太陽光発電、太陽熱、電気自動車、エネルギーマネジメントシステムの導入、情報交流センター設置やウェブ上での見える化などに関し、産学官が連携した地域共生型の取り組み。東日本大震災からの復興の実現と合わせ、地域の発展や持続可能性につなげる狙いがある。

  

 復興に向け、いち早く自治体と民間企業が共同でスマートコミュニティ事業を進めているのがポイント。▽中核となるメガソーラー事業はSPC(特別目的会社)を設立し、収益を地域に還元▽災害時に移動型電源として活躍する電気自動車の導入―など地域と共生する事業の実施が、他地域での展開も期待できる点と評価された。

 

 市が企画し、同研究所がシステム構築、釜石ガスが効率的な運営を担っている。

 

太陽熱を利用した温水器も備えられており、復興住宅の屋上でパネルが活躍する

太陽熱を利用した温水器も備えられており、復興住宅の屋上でパネルが活躍する

 

 市産業振興部の平松福寿部長は、太陽光発電や太陽熱を利用した復興公営住宅の整備、遊休地の活用、太陽光発電などを導入した水産加工場のエネルギー消費の抑制・電力需要の平準化など成果を強調。「復興の取り組み、再生エネルギーを利用した先進的な取り組みが高く評価された。これを機に、エネルギー事業で産業振興、観光振興を進めたい」と先を見据えた。

 

 同大賞は全4部門で、今回は55件の応募があった。審査の結果、経済産業大臣賞4件、資源エネルギー庁長官賞7件、新エネルギー財団会長賞10件、審査委員長特別賞1件の合計22件を選出。地域共生部門は、地域と共生する事業モデルの導入や普及の重要性から本年度新設された。

東北地方の女性海上保安官で初めて制圧指導官となった坂本さん(右)

東北初の女性制圧指導官に〜釜石海上保安部 坂本さん、保安官増へ貢献誓う

東北地方の女性海上保安官で初めて制圧指導官となった坂本さん(右)

東北地方の女性海上保安官で初めて制圧指導官となった坂本さん(右)

 

 釜石海上保安部(松吉慎一郎部長)に第2管区海上保安本部で初めての女性「制圧指導官」が誕生した。釜石海保の巡視船「きたかみ」の航海士補、坂本百合奈さん(24)。テコンドー二段、水泳も得意な身体能力を生かし、同僚保安官の制圧術の向上に努める。

 

 坂本さんは熊本県菊池市出身。2018年に海上保安学校船舶運航システム課程を卒業し、「きたかみ」に配属された。19年に第2管区海上保安本部の制圧指導官養成課程を経て、検定で中級に合格した。

 

 海上保安官が法を執行する中で、危険性がある相手と向き合う際に無力化するのが制圧術。警察の逮捕術と同等の必須技量とされる。その指導者として認定されるのが制圧指導官。現在、同本部には指導官25人がおり、坂本さんは唯一の女性となる。全国では約300人いるが、女性指導官は6人と少ない。

 

 坂本さんは小学2年から高校まで10年間、地元のテコンドー道場で鍛錬を重ねた。夏には海水浴にも親しみ、水泳も得意だ。テコンドーでは小学生で九州チャンピオン、高校では一般も参加する西日本大会を制し、東京五輪出場を夢見た。「海が好き」と進路を海上保安庁に決め、保安学校を卒業して初任地釜石で乗船勤務に就いた。

 

 制圧指導官への挑戦は、テコンドーのキャリアが後押しした。坂本さんは「指導官になり、責任の重さを改めて実感している。(男女を問わず)指導官をもっと増やすお手伝いをしたい。個々の力に合ったスムーズな指導を心がけたい」と前向きに取り組む。

 

 本務では、船舶の立ち入りや救難活動も経験。「時々、船酔いする」と首をすくめた。この2年の間に東日本大震災の不明者捜索にも参加するなど、遺族や被災者に心を寄せる。

 

 将来の夢は「巡視艇の船長になりたい」と、海の安全に関わり続ける決意だ。

 

 釜石海保によると、全国には女性海上保安官が千人以上。占有率7・4%で、10年前の4・3%から大幅に増えた。「きたかみ」にも坂本さんら3人が勤務する。

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縁とらんす編集部による記事です。

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