両石地区で現場見学会〜「早く地元に戻りたい」市内最大規模 海抜20m盛り土、自宅再建 迷う高齢者も


2016/08/03
復興釜石新聞アーカイブ #地域

両石地区工事後のまちのイメージ図

両石地区工事後のまちのイメージ図。高台に住宅が並ぶ(福山コンサルタント提供)

 

 東日本大震災で甚大な被害を受け、大規模な造成工事が進む釜石市両石地区で24日、地元住民や地権者らを対象とした現場見学会が開かれた。同地区は市内でも最大規模となる海抜20メートルの盛り土造成が計画されている。見学者は工事の進捗(しんちょく)状況や新たなまちのイメージについて説明を受け、早期完成への願いを一層、強くした。

 

 見学会は、4月に開かれた同地区のまちづくり協議会での要望を受けて実施され、42人が参加。施工する戸田・青紀土木特定建設工事共同企業体(村上久仁伸所長)が、盛り土の方法や道路・宅地整備について説明した。

 

盛り土した場所から両石湾方面を望む造成工事現場

盛り土した場所から両石湾方面を望む造成工事現場

 

 同地区の盛り土量は国道、宅地合わせて、約87万5千立方メートル(東京ドーム容量の約7割)。現在、ダンプ40台で、月4万~4万5千立方メートルの盛り土材を搬入し、全体量の約5割まで造成が進む。2種の重機を使い、30センチの厚さで土を敷き慣らし締め固める作業を繰り返し、沈下しないような強固な地盤を築いている。

 

 同地区を通る国道45号は現在、迂回(うかい)路を通行しているが、本道は盛り土造成地の西側、震災前とほぼ同位置に建設し、年内の完成、切り替えを予定する。JR山田線西側と両石漁港北側の山を切り開き、新たに市道も建設。国道から箱崎・桑の浜地区に通じる道路は現在、同漁港近くの低地を通っているが、今回の新道整備(延長約400メートル)で、浸水の危険を避けた通行が可能となる。両石側の起点は、新たに整備される住宅地付近で国道45号に結節する。

 

工事担当者から説明を受ける見学会の参加者ら

工事担当者から説明を受ける見学会の参加者ら

 

 沢水などを流す両石川(全長588メートル)は、コンクリート製のトンネルで盛り土の地下を通し、地表は緑地帯にする。国道東側には、県が整備する集合タイプの災害公営住宅(24戸)と市が整備する戸建て公営住宅(24戸)を建設。造成地内に70戸分の自立再建用地を整備する計画で、再建者への宅地の引き渡しは2017年9月以降になる見通し。

 

 両石地区には震災前、261世帯が暮らしたが、震災で224世帯が被災。仮設住宅などに住み、土地造成後に同地区に戻りたい意向を示しているのは、4月末時点で118世帯となっている。

 

 平田の仮設住宅に暮らす久保秀悦さん(56)は自立再建を希望。現場を目にし、「いろいろ問題はあるだろうが、とりあえず早くやってほしい。あと少し(の辛抱)と思っても、やっぱりきつい。早く地元に戻りたい」と古里への思いを募らせた。

 

 甲子町の仮設住宅から足を運んだ山本きし子さん(75)は、盛り土の高さに驚きながらも、「両石の自宅は昭和8年の津波後に沢の一番上に建てたが、震災でやられた。高いから一生涯安心ということはない。いざという時は少しでも高い所へ」と震災の教訓を胸に刻んだ。夫と2人で自宅再建を望んできたが、「(高齢になる中で)これから家を建てるのはどうなのか。この時期になってくると、決めかねてしまう」と5年の歳月がもたらした大きな迷いに頭を悩ませた。

 

(復興釜石新聞 2016年7月27日発行 第507号より)

 

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