春季高校野球県大会〜釜石商工高校ベスト8


2016/05/31
復興釜石新聞アーカイブ #スポーツ

1回戦 盛岡中央に競り勝つ 延長十二回 4番・尾形サヨナラ打

 

1回戦 釜石商工—盛岡中央

1回戦 釜石商工—盛岡中央。延長戦の末サヨナラ勝ち、ホームベースに集まり、勝利に沸く釜石商工ナイン=20日、金ケ崎町・森山球場

 

 第63回春季東北地区高校野球県大会は20日から一関市の一関運動公園球場など3球場で行われ、釜石商工が1回戦で延長十二回の末、盛岡中央に3-2でサヨナラ勝ち。2回戦は黒沢尻工を4-2で振り切り、ベスト8に進出。夏の高校野球県大会のシード権を勝ち取った。準々決勝では、春季県大会の連覇を目指す一関学院に0-10(七回コールド)で完敗したものの、夏の大会へ向けて大きな自信をつかんだ。一方、センバツで1勝し注目を集める釜石は1回戦で一関工に6-9で敗退。一時は6-7と1点差まで迫ったものの、序盤の失点を挽回できず、初戦で姿を消した。

 

◇1回戦(20日)
盛岡中央
000020000000  2
000000200001× 3
釜石商工

 

(延長十二回)
(盛)堀崎、高橋宣―麦田
(釜)中村、鈴木―菊池健
▽三塁打 佐藤飛、堀江(盛)山崎(釜)

 
 
 釜石商工が延長十二回までもつれ込む大熱戦の末、私立の強豪校に競り勝ち、目標とする東北大会出場へ弾みをつけた。

 

 2点を追う釜石商工は七回、2つの四球を絡めて2死一、二塁としたあと、1番山崎優(3年)が右中間を破る三塁打を放ち同点。延長十二回には山崎の安打と2つの四球で2死満塁としたあと、4番尾形拓真(3年)が中前に弾き返し、三走の菊池勇之介(3年)がサヨナラのベースを踏んだ。

 

 2-2の同点で2死満塁。延長十二回のサヨナラの場面で、尾形は直球に狙いを絞っていた。5球目。待っていた直球をコンパクトに振り抜くと、打球はきれいに中前へ抜けた。

 

 161・5センチ、64キロと小柄だが、勝負強さを買われ、昨年秋から4番に座る。直前の2打席はいずれも三振に倒れ、巻き返す機会を待っていた。それまではストレートと変化球の見極めが全然できていなかったという。「ここだな」と狙いを定めて振り抜いた、人生で初めてのサヨナラ打。「興奮し過ぎて気持ちがついてこなかった」と照れ臭そうに殊勲打の喜びをかみしめた。

 

 釜石商工は練習試合を含め、先制を許した試合はほとんど勝てていなかった。久保田達也監督は「こういう試合をものにできてこそ、子どもたちは成長できる」と願いを込め、打席に送り出した。スクイズで点を取れる場面もあったが、「彼らの力で勝負してほしい」と小細工は避け、真っ向勝負を挑ませた。

 

 「仕事でも勉強でも失敗を繰り返すことで強くなる」と久保田監督。2打席連続で三振に倒れたあとチャンスが巡ってきた尾形の打席についても、「むしろ、回ってきてくれないかと思っていた。見事に打ってくれ、頼もしい」と4番の成長を喜んだ。

 

 一番の勝因は、五回途中からロングリリーフした鈴木孝輔(3年)の好投だろう。いきなり連打で2点を失ったが、その後は粘りの投球で無失点に抑え切った。久保田監督は「先発した中村龍斗(3年)も、ベストピッチではなかったものの、よく投げてくれた。完投能力がある子はほかにもいる。まだまだ強くなりますよ」。

 

2回戦 黒沢尻工振り切る 中村ー鈴木 勝利の継投

 

◇2回戦(22日)
黒沢尻工
000110000 2
310000000 4
釜石商工

 

(黒)柳沢、岩崎―高橋幸
(釜)中村、鈴木―菊池健
▽三塁打 菅原(黒)山崎(釜)
▽二塁打 尾形(釜)

 

 釜石商工が、甲子園経験校の黒沢尻工を破り、ベスト8進出を決めた。

 

2回戦 釜石商工—黒沢尻工 初回、釜石商工の尾形が先制打を放つ

2回戦 釜石商工—黒沢尻工 初回、釜石商工の尾形が先制打を放つ

 

 初回、1死一、二塁から4番尾形拓真(3年)が右翼線二塁打を放ち先制。さらに犠飛と敵失で2点を加えた。二回には1死から1番山崎優(3年)が中越え三塁打を放ち、犠飛でさらに1点を追加した。三回以降は、代わった相手投手に苦戦。五回までに2点差まで詰め寄られたが、中村龍斗(3年)から鈴木孝輔(3年)への継投で逃げ切った。

 

五回途中から継投し、延長戦を最後まで投げ抜いた鈴木孝輔投手

五回途中から継投し、延長戦を最後まで投げ抜いた鈴木孝輔投手=22日、一関市運動公園球場

 

 「ひどい試合内容。相手からもらった点ばかり。きょうはミーティングが長くなります」。1回戦に続き強豪校を撃破したものの、久保田達也監督は笑顔を見せなかった。「自分たちでどうやるのか、全然できていない。ただなんとなく試合をしているだけ」と、勝って兜(かぶと)の緒を締めた。

 

 1回戦に続き殊勲打を放った4番尾形についても、「結果オーライ。ゲッツーになる当たりだった」と手厳しい。その尾形。「一、二塁間へ緩いゴロという指示だった。次の打席ではヒットを打ちながらオーバーランしてしまって(アウト)」と反省ばかりを口にした。

 

 打線はいま一つだったが、中村―鈴木の継投は〝勝利の方程式〟になりつつある。この試合も五回から継投した鈴木が最後まで無失点に抑え、勝利をもたらした。

 

 鈴木の定位置は遊撃で、見事なグローブさばきで内野陣を引き締める。「投げるより守る方が好き」というが、久保田監督は「ともかくチームのためという犠牲心が強い。背中で引っ張るタイプ」と頼りにする。右サイドスロー。164センチ、62キロと小柄だが、球速は130キロを超え、決め球は打者の足もとに鋭く落ちるシンカー。昨年秋の地区予選で、延長十三回の末、釜石にサヨナラ負けした悔しさが勝利の原動力になっている。

 

準々決勝 一関学院にコールド負け 打てず、守れず 課題残す

 

関学院に敗れベスト4進出はならなかった釜石商工ナイン

準々決勝 一関学院に敗れベスト4進出はならなかった釜石商工ナイン=23日、金ケ崎町・森山球場

 

◇準々決勝(23日)
一関学院
0600022 10
0000000 0
釜石商工

 

(七回コールド)
(一)大竹、佐々木―斎藤
(釜)中村、鎌田、山崎、菊池瑠―菊池健
▽二塁打 斎藤、小椋(一)

 

 釜石商工は継投した4投手が合わせて14安打を浴び10失点。打線も2安打無得点に終わり、ベスト4進出はならなかった。

 

 県内屈指の強豪校、一関学院の壁は厚かった。「完敗です。出る、進める、返す。すべての面で私立高の力が上回っていた。もっと練習しないとダメということ」。久保田達也監督は、さばさばした表情で敗戦を振り返った。

 

 リリーフエースの鈴木孝輔(3年)が最初の打席で右腕に死球を受け、負傷したのが痛かった。先発中村龍斗(3年)から3人を継投したが、一関打線には通用しなかった。

 

 一塁までワンバウンドでしか届かない送球で、七回まで遊撃で頑張った鈴木は「夏、絶対に勝ちます」とリベンジを誓う。チーム2安打のうち1安打を放って意地を見せた菊池勇之介主将(3年)は「目標の東北大会出場はならなかったが、強豪校に2つ勝ち、夏に向けて成長はできた。ミスを少しずつ減らしていけば、きっと夏はいける」と前を向いた。

 

(復興釜石新聞 2016年5月25日発行 第489号より)

 

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