センバツ初勝利 復興の光に〜21世紀対決 小豆島に2-1、釜石高 歴史つくった


2016/03/28
復興釜石新聞アーカイブ #スポーツ

一塁側の応援スタンドに駆け寄る釜石高ナイン

悲願の甲子園初勝利。「校歌」を歌った後、一塁側の応援スタンドに駆け寄る釜石高ナイン

 

 「鋼鐵(はがね)の意志(こころ)」甲子園に響く――。第88回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は20日、西宮市の阪神甲子園球場で開幕。釜石(岩手)は第2日の第1試合で同じ21世紀枠の小豆島(香川)と対戦し、2―1で競り勝った。不利と予想された下馬評を覆し、20年ぶり2回目のセンバツで手にする悲願の甲子園初勝利。一塁側のアルプススタンドには釜石から、あるいは釜石ゆかりの各地から約2千人が応援に駆け付け、被災地に届ける1勝に沸いた。

 

 釜石が接戦を制し、悲願の甲子園初勝利を手にした。三回1死三塁で1番佐々木航が中前に弾き返して先制。佐々木航は八回にも中前打で出塁し、3番奥村の中越え二塁打で生還。結局、これが決勝点となった。主戦の岩間は立ち上がりこそ制球が定まらなかったが、尻上がりに調子を上げ、直球とスライダーにチェンジアップを効果的に混ぜて打ち取り、完投した。

 

被災地に届ける勇気の1勝

 

スコアボード

 

 20年前、釜石南高として初めて甲子園の土を踏んだ、米子東とのあの初戦が思わず頭をよぎった。2―0とリードして迎えた最終回の守り。1死二塁から左前安打にエラーが絡み、1点差に迫られる。20年前はここから逆転され、無念の涙をのんだが、今度は違った。落ち着いて後続を内野ゴロに打ち取り、ゲームセット。「釜石高の歴史をつくった」。九回を投げ抜いた岩間大投手は、4万2千人の大観衆の中で飛び上がって喜んだ。

 

 「ここまでが長かった。たくさんの期待を背負い、子どもたちにはつらい時期もあったと思うが、本当におめでとうと言ってやりたい」。佐々木偉彦監督は選手とともに、晴れやかな表情で母校の校歌を甲子園に響かせた。

 

 21世紀枠でつかんだ2度目のセンバツ切符。しかも震災を乗り越えての出場で全国から注目を集めることになったが、のしかかる重圧も大きかった。技術よりメンタル面を重視してきた佐々木監督。時には「(被災地ということで)ひいきにされることに甘えるな」と選手に厳しく諭すこともあったという。「野球と震災は分けて考えています。野球をやるのは生徒。せっかく出るのであれば、シンプルに野球に集中し楽しんでほしかった」。32歳の青年監督は、この信念を貫き通した。

 

 大舞台に向かって選手の気持ちを盛り上げていく心配りも見事だった。試合直前の室内練習の場面では、各部員宛てのメッセージをパソコンの画面に映し出して見せた。「ここで、それが出るか」。岩間投手は感極まり、思わず泣いたという。

 

 「うちは弱いです」と佐々木監督はよく口にする。甲子園本番までの練習試合は8連敗。最後に予定していた練習試合は、雨もあったが取りやめたほど。うまくいかなかった時期を乗り越え、監督のタイムリーなメッセージがナインの気持ちを切り替え、奮い立たせた。

 

 ベンチでは「一丸」を心がけ、親指と小指を突き上げる共通ポーズで盛り上げた。「どんな状況の時でも気持ちを落とさず、『いいね』。これが勝利のルーティーン」と佐々木監督は笑った。

 

 震災後、21世紀枠での東北勢の勝利は初めて。大会前に目標に掲げていた「ベスト4」へ一歩近づいた。次戦の相手は滋賀学園(滋賀県)。岩間投手は「次もガンガン強気で攻めたい」と力を込める。粘りに粘ってセンバツ出場につなげた、昨秋のムードに似てきた。

 

(復興釜石新聞 2016年3月23日発行 第472号より)

 

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