「お天道様はみています」釜石小校長紺野さん 教員生活集大成


2015/06/11
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

 釜石小校長の紺野仁司さん(59)が、校長職に就いた2007年からこれまでに、子どもたちや保護者、教職員らに贈ったメッセージや物語をまとめた「お天道様はみています~校長先生のおはなし」を自費出版した。「勉強も大事だけど、小学校時代のいろんな体験がこれからの自分をつくるもとになる」。来春、定年退職を控える紺野さんが在職中に伝えたい思いを凝縮した。

 

釜石小学校校長の紺野仁司さん
「在職中に1冊」との念願をかなえ、自費出版した「お天道様はみています」を手に笑顔を見せる紺野仁司さん

 

 紺野さんは釜石市上中島町に生まれ、現在は平田に住む。大学を卒業後、一般企業に3年間勤務し、その後1年間大学専攻科で特別支援教育を学んだ。1982年から県内の小学校に勤務。07年から3年間、宮古市の千徳小、10年から4年間、釜石市の双葉小、昨年から釜石小校長を務めている。

 

親子と先生に贈るメッセージ 温かく、不思議で、怖いお話

 

 「お天道様は…」はB6判で、3部構成、200ページ。校長として子どもたちに語りかけた「全校朝会のおはなし」は、自身の小学校時代の体験や教え子との触れ合いの中で生まれた心に残るエピソードなどを織り交ぜ、本のタイトルになった祖母の教えのほか、「ごめんねヨッシー」「たくさんの一番」などのタイトルで10話を取り上げた。

 

 雨の日の休み時間、教室で退屈に過ごす子どもたちを楽しませようと考えた「校長先生のこわ~いはなし」では、20話ほどの中から「きつねからのプロポーズ」「タッちゃんは解凍人間」など7話を紹介。「明窓」と名付け、教職員に配布する校長通信は千徳小時代から続き200号を超えており、再編集したものを掲載した。

 

 双葉小時代に東日本大震災で被災し、両親と住んでいた鵜住居町の家は津波で流失。同校は避難所となり対応に追われた。そんな一時期、聞こえてきた「音の話」、子どもたちに送った「命を守る言葉」なども収録した。

 

 「昭和の時代は、生活は豊かじゃなかったが、心が豊かだった。失われつつある思いやり、損得ではない無償の行為、今を大切にする生き方。そのような種を、子どもたちの心にまきたいと思いを込めた」と振り返る紺野さん。「34年間の教員の証し。(執筆を終え)寂しくなってきたが、まだやることがある。子どもたちと物語を作り上げる楽しみが」と笑みを浮かべる。

 

 退職まで約10カ月となったが、これからも「あったかくて楽しい、不思議で、こわ~い話」を伝え続ける。「お天道様は…」は1204円(税別)で、釜石市内の書店で販売している。

復興釜石新聞

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