SL銀河 5年目運行開始〜復興発信、観光振興に膨らむ期待


2018/05/02
復興釜石新聞アーカイブ #観光

SL乗車に期待を高める東京の子どもたち。釜石ではラグビー体験も楽しんだ

SL乗車に期待を高める東京の子どもたち。釜石ではラグビー体験も楽しんだ

 

 JR釜石線(花巻―釜石間、90・2キロ)を走る蒸気機関車「SL銀河」は、21日から今季の運行を開始した。初日の下り列車(釜石行き)は、客車4両がほぼ満席。乗客は、各駅や線路沿いで地元住民らの熱い歓迎を受けた。運行5年目の今年は9月30日まで、土日・祝日を中心に上下53本が運行される予定。SLシーズンと連動した観光振興に期待がかかる。

 

釜石駅では虎舞 ゆかた姿のもてなしも

 

 21日、午前10時37分花巻発の列車は、4時間半をかけ釜石に到着。線路をはさんだシープラザ釜石のデッキには、駅前で花植えのボランティア活動に取り組んだ拓殖大生や一般市民らが陣取り、約半年ぶりの雄姿を迎えた。

 

 駅のホームでは、釜石市のキャラクター「かまリン」、JR、観光関係者らが降り立った乗客を歓迎。ホテルフォルクローロ三陸釜石に勤務し、ラグビーの釜石シーウェイブス(SW)RFCに所属するダラス・タタナ選手(26)は今年もジャージー姿で出迎え、記念撮影で乗客と触れ合った。浴衣で釜石を盛り上げる活動を行う市民有志の「ゆかたおもてなし隊」は、女性2人が活躍。釜石商工高生は対面ホームで虎舞を披露し、乗客らが盛んにカメラを向けた。

 

釜石商工高生の虎舞に見入る乗客。郷土芸能のもてなしは運行初日ならでは

釜石商工高生の虎舞に見入る乗客。郷土芸能のもてなしは運行初日ならでは

 

 秋田県仙北市役所の仲間6人で乗車した加古信夫さん(59)は、宮沢賢治の世界観を演出した車内、主要駅で披露される郷土芸能など一番列車ならではのもてなしに感激。「岩手の歴史や文化も勉強でき、目に訴えるものが多い。石炭を燃やす匂いとか昔ながらの温かさが何ともいい感じ」とSL銀河の魅力に浸った。

 

 自らを“蒸気機関車好き”と称する北上市の佐藤和斗君(二子小3年)は、今まで外から追いかけて手を振るだけだったSL銀河に念願の初乗車。「窓からの景色が良かった。車体も迫力がある。また乗ってみたい」と目を輝かせた。母聖子さん(35)は「車内から見ると沿線に多くの人がいて、SLを見ることが元気につながっているんだと感じた。帰りは夫の車で釜石の復興状況を見ながら帰ります」と話した。

 

 釜石観光物産協会は今年も、乗客らにホタテの稚貝汁をお振る舞い。市内の観光、宿泊施設やレンタカー利用などに使える500円のお買い物券(1千円以上の買い物で利用可能)も配った。同券はSL運行期間中、計3千枚を配布予定で、乗客の釜石滞在を促し、観光リピーターにつなげることを狙う。
 SL銀河は昨年、上下51本運行し、延べ約7200人が乗車。平均乗車率は前年同様の8割を維持した。JR東日本盛岡支社では本年度も引き続き、SL運行を通じた復興支援と地域活性化に寄与したいとしている。

 

折り返しは吹奏楽でお見送り 釜石駅の工藤駅長「感動を届けたい」

 

 SL銀河運行2日目の22日は、釜石から花巻への上り運行。午前10時55分の出発を前に、乗客や見物客が機関車の車体や出発準備の様子を見学。釜石高吹奏楽部が演奏を披露し、旅立ち気分を高めた。

 

花巻行きSL銀河の出発合図をする工藤釜石駅長

花巻行きSL銀河の出発合図をする工藤釜石駅長

 

 東京から体験学習に訪れた子どもたち22人のグループは、乗車前にSLのスケッチも楽しんだ。慶應義塾幼稚舎2年の錦織賢史朗君(7)は「正面の車名が入った丸いヘッドマークがかっこいい。客車内がどうなっているのか楽しみ」と期待に胸を躍らせた。

 

 発車時刻には釜石駅の工藤冨士雄駅長(55)が右手を上げて出発合図。高らかに汽笛を鳴らし、走り出す車両を多くの人が手を振って見送った。

 

 「復興のためによみがえらせた機関車が故障もなく5年目を迎えられ、うれしい。乗務員、整備士、これまで乗ってくれたSL銀河ファンに心から感謝したい」と工藤駅長。最近はチケットも取りやすくなってきており、「ぜひ、地元の方にもどんどん乗ってほしい。沿線で手を振るなどの出迎えと合わせ、地元民による一層の盛り上げを図りたい」と希望を込めた。

 

 工藤駅長によると、SL銀河の乗客は釜石駅に最低でも約50人は降りるという。乗客に宿泊してもらうには、市内の観光関係者や有志と連携し、毎年乗ってくれるファンを引きつける工夫も必要。工藤駅長は「車内でも、お客さまに感動してもらえるようなものを届けたい」と意欲を示した。

 

(復興釜石新聞 2018年4月25日発行 第684号より)

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