「きたかみ」37年の役目終える、震災不明者捜索に貢献〜釜石海保 巡視船解役式、新船と交代


2018/02/16
復興釜石新聞アーカイブ #地域

吉本部長は「海のつわもの」と呼び、解役を迎えた「きたかみ」との別れを惜しんだ

吉本部長は「海のつわもの」と呼び、解役を迎えた「きたかみ」との別れを惜しんだ

 

 耐用期限に達した釜石海上保安部(吉本直哉部長)の巡視船「きたかみ」(325トン、西村美徳船長ら22人乗り組み)の解役式は5日、係留地の釜石港専用桟橋で行われた。東日本大震災では緊急出港して津波から逃れ、行方不明者の捜索などに貢献した。解役式では吉本部長ら職員30人が、37年間にわたり多くの海上保安官と東北の海の安全を守り続けた頼もしい船に感謝し、別れを告げた。  

 

 「きたかみ」は1980年に竣工(しゅんこう)し、青森海保の巡視船「おいらせ」として就役。2004年に釜石海保に配属替えとなり、「きたかみ」に改名した。

 

 吉本部長は式辞で「昼夜を分かたず東北の海を守ってきた。その間、海難362件に対応し、196人を救う輝かしい実績を残した。『海のつわもの』の長年の労をねぎらい、その誇りは2代目の『きたかみ』に引き継ぐ」と述べ、決意を新たにした。

 

 トップマストに掲揚し続けてきた庁旗と船尾の国旗を降ろし、西村船長から部長に返納した。船長らは船首で別れの献酒。若手の職員が白い塗料で船名を消し、式を終了した。解役式は、海上保安官のOBらも静かに見守った。

 

 「きたかみ」の通信長を最後に、3年前に退職した釜石市甲子町上大畑の大須賀光男さん(63)は、約40年にわたる勤務のうち34年を船で海の保安に当たった。釧路、青森、八戸、金沢、新潟、そして釜石の各海保で巡視船10隻、海洋測量船にも乗った。「青森の『おいらせ』時代も知っている。懐かしい。釜石(海保)に初めて配属される新造の巡視船にも興味がある。同型の6番船だから、ずいぶん改善されているはず」と期待を膨らませた。

 

 同船は19日、えい航されて釜石港を去る。新たに配属される2代目の「きたかみ」は28日に就役する。

 

操縦手の佐渡さん 大津波からの“脱出”振り返る

 

船橋で大津波からの脱出を語る佐渡さん

船橋で大津波からの脱出を語る佐渡さん

 

退役した「きたかみ」は、東日本大震災発生時は釜石港に係留中だったが、大津波を目前に緊急出港。及川邦夫船長の指揮下、大波にもまれながらも“脱出”に成功した。

 

 当時、操舵(そうだ)手としてかじを握っていた佐渡博幸さん(55)=釜石海保管理課=は「地震は長く、気味の悪い揺れだった。もやいを解き、長い鎖の錨(いかり)を巻き揚げ、緊急出港は訓練より早くできた。船橋には乗組員が詰め、船長の指示する声だけが響いた。無駄口を利く雰囲気ではなかった。高いうねりの速い津波にかじが利かず、なかなか前に進むことができなかったが、この船なら津波も乗り越えられると思った」と当時の緊迫した状況を振り返った。

 

 船の安全を確保すると、その後は海上を浮遊する船、家屋、がれきの中で生存者の捜索に“奮闘”。復旧支援活動にも努めた。

 

(復興釜石新聞 2018年2月10日発行 第663号より)

 

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