響く『よいさ』燃える釜石、復活から5年目の夏〜震災復興から交流促進へ、国際色も豊かに 躍動35団体 1900人


2017/08/14
復興釜石新聞アーカイブ #地域

「ファイト黒潮健児」の横幕を掲げて行進する平田小の児童ら。沿道では約7千人の見物客が声援を送った

「ファイト黒潮健児」の横幕を掲げて行進する平田小の児童ら。沿道では約7千人の見物客が声援を送った

 

 釜石の夏を熱く彩る「釜石よいさ」(同実行委主催)は5日、大町から只越町の目抜き通りを特設会場に開かれた。東日本大震災による休止を経て復活してから5回目、通算では29回目。「サーサ、ヨイヤッサー」の掛け声に合わせ、35団体、約1900人が思い思いのスタイルで舞い踊り、パレードを繰り広げた。震災後は「復興」を前面に掲げてきた釜石よいさ。震災から6年が経過し、復興もかなり前進。2年後のラグビーワールドカップ(W杯)開催へ向け、夏の祭りは国際交流の場へと変わりつつあることを印象付けた。

 

開会を前に特設舞台から餅をまく野田市長、君ケ洞実行委委員長ら

開会を前に特設舞台から餅をまく野田市長、君ケ洞実行委委員長ら

 

 青葉通りに設置された特設舞台で開会セレモニー。実行委の君ケ洞剛一委員長(39)は「継続してきた先輩たちのおかげで今がある。よいさのバトンを渡す積み重ねが釜石の明るい未来につながる」と宣言。野田武則市長は「復興工事も来年で完了する見通し。全国から集まった多くの人を力に早期復興につなげたい」と前を向いた。

 

 にぎやかに餅まきが行われたあと、尾崎青友会が郷土芸能の虎舞を披露。続いて甲東、かまいしこども園、正福寺幼稚園、上中島保育所の園児らが元気いっぱいに「子供よいさ」を繰り広げた。

 

 総勢50人のおはやし隊の笛や太鼓が鳴り響き、そろいの浴衣姿のよいさ小町があでやかに前ばやしを披露すると、いよいよ本番がスタート。企業や団体、学校ごとに趣向を凝らしたスタイルで踊りの輪が回り始めた。

 

「がんばろう釜石」とアピールする復興整備事業の仲間たち

「がんばろう釜石」とアピールする復興整備事業の仲間たち

 

 市の職員らは、2年後に迫ったラグビーW杯へ向け、のぼり旗を先頭に行進。W杯を共同開催する県の沿岸広域振興局職員らは「ワールドカップを成功させよう」の横断幕を掲げてアピールした。

 

 拓殖大や聖学院大の学生、外資系企業のUBS証券グループなど、釜石の復興を外から支え続ける団体も参加。数多くの外国人も踊りの輪に加わるなど国際色も豊かになった。

 

笑顔で躍動する拓殖大の学生ら

笑顔で躍動する拓殖大の学生ら

 

釜石の復興を支え続ける聖学院大の学生も「ヨイサッ」

釜石の復興を支え続ける聖学院大の学生も「ヨイサッ」

 

 市国際交流協会の輪には、バイクレースに出場するため東京から北海道に向かう途中というプロライダー、ベンソン・バイウさん(30)=フランス=とガールフレンドのステファニー・ロウエさん(30)=イギリス=が飛び入り。「イエー!」と大ノリで、「バイクレースよりも興奮した。人々の熱い吐息も感じることができた」と声を弾ませた。

 

バイクで釜石を通りかかり、飛び入り参加したバイウさん(左)とロウエさん(右)

バイクで釜石を通りかかり、飛び入り参加したバイウさん(左)とロウエさん(右)

 

 沿道では市民や観光客ら約7千人が拍手を送り、夏の饗宴を盛り上げた。市内の水産加工場で技能実習生として働くベトナムの若い女性たちも、うちわを振りながら声援。今年5月に釜石にやってきたドー・ティ・トウフォンさん(19)は「これから3年間、釜石でがんばります」と、躍動する市民の輪に思いを重ねた。

 

釜石市の国際交流員、バリーさん(右)、ハラムズさん(左)もノリノリ。ベトナムやオーストラリアの国旗も躍る

釜石市の国際交流員、バリーさん(右)、ハラムズさん(左)もノリノリ。ベトナムやオーストラリアの国旗も躍る

 

 友人と誘い合って駆け付けた天神町の野崎諒子さん(78)は「毎年これが楽しみ。ホントはこうして見るより踊る方が好き」と言いながら、目の前で踊る4歳の孫に手を振った。

 

 昨年4月の熊本地震で大きな被害を出した熊本県益城町から、被災者が「支援を受けた返礼に」と、釜石よいさに参加した。

 

 屋台村で花屋を営む倉本憲幸さん(40)と、キッチンカーでカフェを営む市村修一さん(33)の2家族11人。釜石まで約1900キロの道のりを車に同乗して駆け付け、益城町の西村博則町長の礼状を野田武則市長に手渡した。

 

熊本県益城町から返礼に駆け付けた倉本さん、市村さん一家

熊本県益城町から返礼に駆け付けた倉本さん、市村さん一家

 

 昨年起きた熊本地震の際、キッチンカーを使って益城町に行き、炊き出しを行った三塚浩之さん(54)=釜石市浜町=が縁をつないだ。三塚さんは「東日本大震災の際に支援を受けた九州に恩返しをしよう」とリストバンドを販売して募金を集め、これまで7回も益城町まで足を運び、12万円近い支援金も届けている。

 

 三塚さんは震災前、市役所の近くで和食店を営んでいたが、津波で被災。その後、キッチンカーで営業を再開した。さらに飲食店の再開を目指す三塚さんの姿に刺激を受け、「リバイバル マシキ」という復興団体を立ち上げた倉本さんは「何から手を付けていいか分からない状況だが、少しずつ動き始めたい」。屋台村の仮設店舗で倉本さんの仲間だった市村さんも「益城町の夏祭りも復活させたい」と前を向く。

 

(復興釜石新聞 2017年8月9日発行 第612号より)

 

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