待望の新校舎完成、記念式典 地域挙げて祝う〜鵜住居小と釜石東中、唐丹小と唐丹中


2017/05/02
復興釜石新聞アーカイブ #地域

新校舎での生活に期待を膨らませ校歌を斉唱する鵜住居小生

新校舎での生活に期待を膨らませ校歌を斉唱する鵜住居小生

 

 東日本大震災の津波被害から6年を経て、高台に併設新築された釜石市鵜住居町の鵜住居小と釜石東中、唐丹町の唐丹小、中の校舎完成記念式典が22、23の両日、それぞれの体育館で開かれた。仮設校舎から移り、新年度の学校生活を始めている児童生徒らは、待望の本設校舎の完成を地域住民らと喜び合い、学習や各種活動により一層励んでいくことを誓った。

 

鵜住居小・釜石東中、防災教育のモデル示す

 

 22日に行われた鵜住居小(中軽米利夫校長、児童141人)と釜石東中(佐々木賢治校長、生徒117人)の校舎完成式には約400人が出席。野田武則市長は「鵜住居復興のシンボルとしても大きな期待が寄せられる。この学校を愛し、のびのびと学び、新たな歴史と伝統を刻んでいってほしい」と式辞を述べた。

 

 来賓で招かれた文科省文教施設企画部の深堀直人防災推進室長は震災の教訓を生かした施設整備をたたえ、「学校と地域が一体となった防災教育の範を全国に示してほしい」と期待を込めた。

 

 津波で全壊した両校の復旧事業は、地域の防災拠点としても機能する複合教育施設を目指し、被災した鵜住居幼稚園、同児童館と一体的に整備。同町中心部の山を切り崩し、海抜15~26メートルの高さに造成した約7万7千平方メートルの敷地に、鉄骨4階建ての校舎と体育館、グラウンド、プール、木造平屋の園舎を配置(児童館は小学校棟1階)。校内に防災備蓄倉庫を備えた。

 

 設計施工管理はシーラカンスアンドアソシエイツ、敷地造成は都市再生機構、建物の施工は大林組、熊谷組、東洋建設、元持による特定共同企業体が担い、2013~16年度に造成工事、15年6月~17年3月に建物の建設工事が行われた。総事業費は約92億1300万円。

 

 震災後、鵜住居小は双葉小と小佐野小を、東中は釜石中を間借りして学校を再開。12年2月から鵜住居の内陸部に建設された仮設校舎に移り、本設校舎の完成を待ちながら約5年間を過ごしてきた。式典では鵜小の5、6年生が虎舞と甚句、東中生が合唱を披露。両校の校歌を斉唱し、新校舎の完成を華やかに祝った。

 

いつかこの海をこえて」など2曲を合唱した釜石東中生

いつかこの海をこえて」など2曲を合唱した釜石東中生

 

 川口颯斗君(鵜小5年)は「虎舞に、これから頑張るぞという決意と地域の人たちへの感謝の気持ちを込めた。新校舎は窓が多く海も見えて、すごく気持ちいい」と目を輝かせ、三浦花音さん(同6年)は「広くてきれい。階段もたくさんあって、毎日がうきうき気分。明るく元気な学校にしていきたい」と気持ちを新たにした。沼﨑壱君(東中3年)は「自分たちの校舎が持てるうれしさでいっぱい。これから下の学年に引き継いでいくものなので清掃とかをしっかり行い、大切に使いたい」と話し、新しいグラウンドでの運動会を心待ちにした。

 

唐丹小中、復興発信 高らかに宣言

 

 23日に行われた唐丹小(一條直人校長、児童45人)と唐丹中(千葉伸一校長、生徒35人)の校舎完成式には、約240人が出席した。野田武則市長の式辞に続き、両校を代表し千葉校長があいさつ。「新校舎は唐丹地区にとって復興の大きな象徴。支えてくれた人たちへの感謝を表し、震災の教訓を忘れず語り継ぐなど、新校舎にふさわしい活動に小、中が力を合わせて取り組もう」と児童生徒に呼び掛けた。

 
完成した校舎と引き続き工事が進む唐丹小、中の学校敷地

完成した校舎と引き続き工事が進む唐丹小、中の学校敷地

 

 津波や地震被害を受けた両校の復旧は、被災した唐丹児童館も集約する形で実施。従来の唐丹中の敷地(海抜26メートル)と背後の斜面を造成し、約2万平方メートルの敷地に校舎と体育館、グラウンドなどを配置する。木造の校舎は高さをずらした5棟の建物で構成。外部空間を利用した経路で地域の避難ネットワークも強化している。

 

 校舎4棟と体育館は完成したが、児童館などが入る1棟、グラウンド、プールの整備が引き続き進められており、全ての工事が完了するのは来年2月の予定。

 

 設計施工管理は乾久美子建築設計事務所、東京建設コンサルタントによる特定共同企業体、施工は前田建設工業、新光建設による特定共同企業体が行う。総事業費は約46億円。

 

 津波で全壊した唐丹小は震災後、平田小を間借りして学校を再開。唐丹中は地震の大きな揺れで校舎が半壊し、体育館を仕切った仮教室で授業を続けた。2012年1月、中学校のグラウンドに建設された仮設校舎に移り、約5年にわたり小、中が共に学校生活を送ってきた。新校舎には今年2月に入った。

 

「校歌を斉唱し地域住民らと新校舎完成を祝う唐丹小、中生

「校歌を斉唱し地域住民らと新校舎完成を祝う唐丹小、中生

 

 式典では全校児童生徒がステージに並び、震災からこれまでを振り返りながら、支援への感謝の気持ちや新しい学校生活への決意を発表。木のぬくもりあふれる新校舎で、仲間と協力し合い勉強や各種行事に取り組むこと、唐丹の復興を発信していくことなどを声高らかに宣言した。

 

 唐丹町川目地区に住む鈴木富美子さん(75)は「海のまちを一望できるすてきな校舎。子どもたちも喜んでいると思う。地域の皆さんに見守られながら、優しい心を持つ子に育ってほしい。私たちも少しでもお手伝いできたら」と唐丹の明るい未来に希望を託した。

 

(復興釜石新聞 2017年4月26日発行 第583号より)

 

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