劇団「もしょこむ」2年ぶり公演〜ラジオ局を題材に「一人じゃない」メッセージ込める


2017/03/07
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

 もしょこむの2年ぶりの公演は観客の賛同の笑いを誘った

もしょこむの2年ぶりの公演は観客の賛同の笑いを誘った

 

 釜石市の劇団「もしょこむ」(小笠原景子代表)による公演「ON AIR」は2月26日、片岸町の釜石地方森林組合で行われた。釜石での単独公演は2015年の旗揚げ公演以来、2年ぶり。今回はコミュニティラジオ局を題材にしたコメディータッチの演劇で観客を楽しませた。

 

 物語は、北東北沿岸の町「カマイシ町」のコミュニティFMが舞台。100年に一度の大雪に見舞われ町が混乱し、ラジオ局にも問題が発生する中、何とか放送を成功させようと奮闘するスタッフの様子を描いたもので、小笠原梓さん(31)が原作を担当した。

 

 旗揚げでは、震災で両親を亡くし仮設住宅で暮らす姉妹の姿を描いた作品を上演した。「シリアスな作品で被災地の劇団として思い入れのあるものだが、今回は雰囲気を変えて明るい感じで楽しんでもらえるものにしようとみんなでネタを考えた」と小笠原さん。番組に寄せられた悩み相談への珍回答や、スタッフの言い合いがラジオから流れてしまうなど笑いの要素を随所に散りばめた。

 

 被災地の劇団ということもあり、「ここで生きていくには震災と共存していかなければいけない。ちょっとした瞬間に思い出してもらえるようにしたい」と、災害の違いはあるが、避難者や雪かきができずに困っている仮設住宅の高齢者が寄せたメッセージの紹介といった震災を思い起こさせる場面も盛り込んだ。

 

 混乱する人たちに「少しでも気持ちが楽になるよう声を届けたい」と放送を始めたスタッフは、「周りを見て声を掛けて。一人じゃないって思えるように」「目の前にいるうちに思いを伝えて」「踏み出すきっかけは何でもいい」などと声を送り続けた。小笠原さんは「ラジオから聞こえる声には、目には見えないがつながりを感じ、直接会って話をしなくても心が通い合える気がする」、そんなメッセージも込めた。

 

 劇のセットには同組合がプロデュースしたテーブルと椅子のセットを使用。劇中には市内の菓子店などの商品も登場し、観客は”釜石っぽい”物語を楽しんだ。

 

 同劇団の公演を初めて鑑賞した栗林町の小笠原京子さん(70)、藤原成子さん(70)は「手作りの温かみがあって楽しかった。共感できる言葉や場面もあった。場所も木の香りがして、いい雰囲気」と話した。

 

今後の活動継続へ意欲を語った出演者・スタッフ

今後の活動継続へ意欲を語った出演者・スタッフ

 

 同劇団で活動するメンバーは現在7人。これまで県内各地や東京で公演を続けてきた。この公演後、充電期間に入るというが、年1回の独自公演や各種イベントへの参加は継続。小笠原代表は「演劇が釜石の娯楽の一つとして根付いてほしい。いろんなジャンルの作品、楽しんでもらえるものを作っていきたい」と意欲を見せた。

 

(復興釜石新聞 2017年3月1日発行 第567号より)

 

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