心の復興、住みよい釜石へ 文化のまちを創ろう〜「次世代を育てよう」をスローガンに、第46回市民芸術文化祭


2016/11/14
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

釜石草友会の展示では山や野原で育った四季折々の草花の素朴さに来場者もほっこり

釜石草友会の展示では山や野原で育った四季折々の草花の素朴さに来場者もほっこり

 

 「ひらめく芸術、きらめく文化のまち釜石を創ろう」をテーマに、釜石市の芸術の秋を彩る第46回釜石市民芸術文化祭は4日から6日まで鈴子町のシープラザ遊、シープラザ釜石で開かれた。市内最大の文化の祭典は震災以降、作品展示とステージ発表を同じフロアで開催し多彩な芸術の魅力に触れる機会を提供するほか、呈茶のサービスや体験コーナーを設置するなど市民に癒やしや温かさ、豊かさも提供。今年は「こども芸術文化の鑑賞~次世代を担う若い息吹に触れよう・育てよう」をスローガンにした子どもたちの活動に目を向けた展示・発表があり、刺激を受けた参加団体は創作活動へたゆまぬ努力を重ねるとともに、芸術文化の持つ力を次世代につなぐ意欲を新たにしていた。

 

 4日の開会式で野田武則市長は「釜石市民歌の歌詞にある『文化の薫り 燦(さん)然と 鉄の都~』を理解し、まちづくりに取り組むには一人一人の努力が必要」と協力を期待。市芸術文化協会の岩切潤会長は「まちの復興は着実に進んでいるが、心の復興には根強い芸術文化活動が大事。次世代につなぎ、心豊かな住み良いまちになれば」と願った。開幕を祝ってテープカット。釜石、八雲吟詠会の会員が詩吟、参加者全員で「釜石芸術文化協会の歌」を歌った後、ステージではMIA&リアスバンドがジャズなど演奏を披露した。

 

市民芸術文化祭の開幕を祝ってテープカットする関係者

市民芸術文化祭の開幕を祝ってテープカットする関係者

 

 会場では3日間にわたり19団体が作品を公開。華道、絵画、写真、書道などさまざまな分野の力作が並んだ。リボンフラワー石垣教室(石垣邦子代表)の展示には、平田地区の仮設住宅や復興住宅で暮らす人たちも出展。仮設団地で手芸のサロン活動を行っている山口和子さん(69)は「(津波で)何もかも流されたが、作ることと仲間に力、元気をもらっている。出展は1年の集大成で思い出になる。また来年頑張る」と意欲を話した。釜石茶道協会は呈茶で、文化の秋を楽しむ来場者に心休まるひとときを提供した。

 

「リボンフラワーで生活に張りを」。仮設住宅で暮らす人たちが作った作品も並んだ

「リボンフラワーで生活に張りを」。仮設住宅で暮らす人たちが作った作品も並んだ

 

 特別企画展示は「こども芸術文化」がテーマ。釜石草月会(村上マサ子会長)主催の華道こども教室は受講する小学生12人の生け花作品を並べた。釜石小と双葉小3年生は空き缶を使った一輪挿しにメッセージを添えた作品を展示。華やかな黄色い花形が特徴のラン科植物オンシジュームを「ドレスを着た少女のよう」などと表現したのは菊池彩芭(いろは)さん(釜石)。母親の美佳さん(35)は「そんなふうに感じることができるようになったのかと驚き、うれしかった。芸術に触れるっていいね。このまま成長していってほしい」と彩芭さんに温かなまなざしを向けた。

 

メッセージが添えられた一輪挿しの作品は児童の感性が光った

メッセージが添えられた一輪挿しの作品は児童の感性が光った

 

 芸文祭発表部門は9月から市内外の会場で始まり、12月まで続く。展示部門と日程を同じくしたのは11団体。絵画や写真、リメークした布作品などの展示のほか、琴と書のパフォーマンス、子どもを対象にした書とのふれあい体験も行った「ふるさと復興支援グループ釜南44」は今年、芸文協に新たに加盟した。

 

釜石書道協会の会員がさまざまな書体で書いた個性豊かな作品に見入る来場者

釜石書道協会の会員がさまざまな書体で書いた個性豊かな作品に見入る来場者

 

 釜石南高の1969(昭和44)年卒業生でつくる同グループは昨年のこの時期に釜石で初めてのイベントを開催。今回は仙台、秋田、東京など各地と岩手県内から30人以上が集まり、郷土愛を色濃くにじませた作品展示、取り組みを展開した。

 

「釜南44」による書とのふれあい体験に子どもたちは興味津々

「釜南44」による書とのふれあい体験に子どもたちは興味津々

 

 同グループの白田正行代表(66)=仙台市=は「遠く離れても古里を忘れない。外に出た人は年を重ねるごとに古里を思う気持ちが強く、深くなる。『釜石』というキーワードには人を集める力があり、古里を振り返りながら独自の活動もしていきたい」と話した。

 

(復興釜石新聞 2016年11月9日発行 第536号より)

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